複数の大手企業が早期退職を募り、メディアで報じられ話題になっている。早期退職し、その後再就職をしない決断をする場合、早期退職による収入と早期退職後の支出を見積もり、ライフプランを立てておくことが大切だ。早期退職前に考えておくべきお金の話をまとめた。

早期退職をすると退職金はいくら受け取れるのか

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(画像=Shutterstock.com)

企業側が早期退職を募るケースでは、退職金が割増されることが一般的だ。

厚生労働省の「就労条件総合調査 (2018年) 」では、勤続20年以上かつ45歳以上の大学・大学院卒の退職者への平均退職給付額は、定年退職1,983万円、会社都合2,156万円、自己都合1,519万円、早期優遇2,326万円で、早期退職者への退職金が最も高くなっている。

早期退職を検討するなら、社内規定や早期退職募集要項を確認し、退職金をいくら受け取れるかをきちんと把握する必要がある。また、その際には退職金にかかる税金も忘れず計算しておきたい。

仮に、50歳で勤続年数28年、退職金2,300万円を受け取った場合、所得税は約51万円、住民税は約47万円で、税金の合計額は約98万円だ。つまり、退職金として受け取れる金額は約2,202万円ということになる。
※計算内訳の詳細は下記。
退職所得控除 800万+70万× (28-20) =1360万
退職所得 (2300万-1360万) ÷2=470万
所得税 470万×20%-427,500=51万円
住民税 470万×10%=47万円

また、勤続20年以上で45歳以上の人が、会社都合で早期退職した場合、要件を満たせば330日分の失業給付を受け取れる。

早期退職前に考えるべきこと

(1) 40代~50代は出費がかさむ時期

早期退職をすると家賃補助や住宅ローン補助などの福利厚生も受けられなくなる。40代から50代は、子どもの教育費が掛かったり、住宅ローンの返済が残っていたりと、人生において出費の多い時期だ。早期退職後の生活をよくシミュレーションし、生活費として毎月いくらかかるのか、しっかり計算し直すことが重要だ。

参考になるデータとして、総務省統計局の「家計調査報告 (2018年) 」がある。それによると、世帯主平均年齢59.3歳、世帯人員平均2.98人の世帯の消費支出の平均は、月額約29万円だ。

シミュレーションの際には、あわせて家計の見直しも行うといいだろう。たとえば、通信費を抑えるために格安SIMに切り替えたり、加入保険をスリム化したりといった工夫が考えられる。

(2) 厚生年金の半額負担が無くなり、国民年金への加入が必要となる

また会社員として勤務している場合、会社が厚生年金を半額負担してくれている。しかし、退職するとなれば、自分自身で国民年金に加入しなければならない。国民年金には扶養の概念がないため、配偶者を扶養に入れていた場合、配偶者も別途国民年金に加入する必要がある。

退職後も60歳まで国民年金をきちんと納付すれば、65歳から老齢基礎年金を受け取れる。参考として、2019年4月分からの年金額は、年間約78万円となっている。

(3) 老齢厚生年金の金額が減少する

老齢基礎年金に上乗せされる老齢厚生年金の金額は、早期退職によって減少する。老齢厚生年金の金額は、保険料納付月数や給与によって変わるため、早期退職し再就職しないとすればその分の保険料納付月数が少なくなるため、必然的に年金の金額も減少することになる。

将来受け取れる年金額については、「ねんきんダイヤル」や「日本年金機構のホームページ」から確認できる。早期退職をする際には、社会保険料の増加や年金額の減少も加味してライフプランを設計することが大切だ。

「セカンドライフ」をどう過ごすかが重要

退職による減収分をどのように埋めればいいだろうか。早期退職後の「セカンドライフの過ごし方」についても考えておくべきだ。

(1) スキルを身につける

職業訓練校でスキルを身につけ、好きなことを仕事にするのも1つだ。所定の要件を満たしたうえでハローワークの職業訓練を受講すれば、失業給付の支払が延長され、受講手当や通所手当を受け取れる。

(2) 仕事で培ってきたスキルや人脈を活かす

これまで培ってきたスキルや人脈を活かして、フリーランスとして仕事を始める早期退職者もいる。最近ではウェブサービスを通じて個人でも仕事を受注できる環境が整っている。

会社の副業規定を確認したうえで、早期退職前に副業を開始し、収益化の目処が立ったタイミングで早期退職を選択するのもいいだろう。一定の収入が見込めるとなれば、退職後のライフプランも大きく変わってくる。

(3) 地方に移住して自給自足する

都心に住んでいるのであれば、思い切って地方に居を構え、自給自足の生活を始めるのも選択肢のひとつだ。物価水準が低くなり出費を削減することができるはずだ。また、すべてが自給自足とまではいかなくとも、自家菜園で食費を削減するなどの工夫の余地もある。

早期退職後は「40年、50年先」まで考えた上での決断を

早期退職によって自由に使える時間が増える。家族と過ごす時間や自分の趣味に使える時間、いつかやろうと思っていたことにも挑戦できるはずだ。

大事なのは事前にしっかりプランを練ることだ。人生100年時代といわれる今、早期退職後も40年から50年生活していく必要があることはしっかり理解しておきたい。(提供:大和ネクスト銀行


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