アメリカの歴史ある技術誌「MITテクノロジーレビュー」が発表した「世界で最もスマートな企業50社」の2017年版トップ10に日本企業の名前はなかった。一方で中国からはアイフライテック(iFlytek)とテンセント(Tencent)というテック企業がランクインし、投資家の注目を大いに集めた。
世界は両社のどのような点を評価したのだろうか?
世界で最もスマートな企業50について
MITテクノロジーレビューは、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の子会社が発行する技術誌だ。アメリカにおける権威ある技術メディアの一つとして数えられ、毎年発表される「50 Smartest Companies(世界で最もスマートな企業50社)」は大きな注目を集めている。
MITテクノロジーレビューが公式サイトで公表している最新版(2017年版)では、TOP50のうち1〜10位は以下のとおりとなっている。
1位:Nvidia(アメリカ)
2位:SpaceX(アメリカ)
3位:Amazon(アメリカ)
4位:23andMe(アメリカ)
5位:Alphabet(アメリカ)
6位:iFlytek(中国)
7位:Kite Pharma(アメリカ)
8位:Tencent(中国)
9位:Regeneron(アメリカ)
10位:Spark Therapeutics(アメリカ)
TOP10はほぼアメリカ企業が占めるが、中国企業の名前も2社ある。「iFlytek(アイフライテック)」と「Tencent(テンセント)」だ。
AmazonやAlphabetなどの超大手企業やテスラを率いるイーロン・マスクが創業したSpaceXなどの有名企業とともに名を連ねるこの2社には、一体どのような魅力やすごみがあるのだろうか。
アイフライテックの事業概要と有望性
1999年に創業したアイフライテック(科大讯飞股份)社は、中国における大学発ベンチャーとして急成長したソフトウェア企業として知られており、特にAI(人工知能)による音声認識で世界を席巻する技術を有している。
中国政府が掲げる2030年までの「次世代AI発展計画」において、アイフライテックは音声認識の分野を主導する企業として位置付けられており、政府の支援も受けながら近年技術力を高めてきた。中でも言語認識や言語翻訳の技術力の高さには目を見張るものがあり、中国語や英語に加えて日本語の自動翻訳システムもすでに手掛けている。
AIによる言語認識は今後確実に成長が見込める領域とされている。例えば将来的に巨大市場を形成するといわれている「自動運転」では、人が声でシステムに指示を出すようになるとされている。しかし、システムが人の音声を正しく認識できなければ事故につながってしまう。もしアイフライテックの技術がこの分野における「デファクト・スタンダード(事実上の標準)」になれば、同社はさらなる急成長を遂げることができるだろう。
こうした有望性に目をつけ、すでに深圳証券取引所に上場しているアイフライテック の株式を購入・保有している株式投資家は少なくない。
テンセントの事業概要と有望性
ランキングで8位にランクインしたTencent(騰訊控股)は、ネットサービス分野における中国の大手企業だ。1998年に設立され、特にゲーム分野での事業で成功し、成長してきた。日本のGREEやカプコン、任天堂、スクウェア・エニックスなどと提携していることでも知られている。
テンセントは「投資会社」という顔も持ち、投資先企業の事業分野も幅広い。例えば、2019年3月に米ナスダック市場に上場した中国企業のFutu Holdingsはオンライン証券会社だ。韓国最大のモバイルチャットアプリ大手カカオの大株主であることでも知られる。
最近は、いま世界で熱い「スマートシティ」の領域にも力を入れている。「中国のシリコンバレー」とも呼ばれる深圳市とは2015年という早い段階でスマートシティの推進で合意しており、上海などとも共同プロジェクトに取り組んでいる。
スマートシティで成功すれば中国国内だけではなく、世界の都市でその知見やノウハウを展開できる可能性がある。投資家の関心はテンセントのゲーム事業などだけではなく、こうした有望性が高いスマートシティ事業にも向いている。
さらなる成長の可能性がある両社に投資する醍醐味
iFlytekもTencentも最近設立されたばかりのスタートアップ企業というわけではない。ただ現在新たに注力している事業領域を見ると、大企業としての現在の地位に甘えることなく、果敢に挑戦を続けていることが分かる。
MITテクノロジーレビューもそうした点を早くから見抜き、両社をランキング上位にランクインさせたのだろう。挑戦なくしてさらなる成長はない。こうした企業がひしめく中国市場の今後にも注目が集まっている。
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