◯日本も他人事では無い?〜各国で進む最高税率の上昇〜
ヨーロッパにおけるこのような騒動ですが、日本も決して他人事ではありません。
そもそもこの増税の背景は、2009年以降のリーマンショックを原因とした、税収減と財政出動による政府収支の悪化です。
フランスは欧州債務危機のさなか、財政再建に気を配らねばなりません。隣国スペインが金融市場から標的にされる中、「スペインの次」にならないようにするには、フランスは財政健全化を進めているとアピールする必要があるからです。
そして今回の増税策も、その一環になります。
むしろ赤字や政府債務の規模は世界でトップクラスの日本にとって、財政悪化は他人事ではありません。
※政府純債務残高=政府の総債務から、政府の持つ金融資産を差し引いたもの
解散総選挙が決定したため、今後の動向は断定出来ませんが、11月頭には日本でも政府、民主党が所得税の最高税率引き上げに関し、2015年から課税所得5千万円超を対象に現行の40%から45%にする方向で調整に入ったと報じられました。また、相続税の基礎控除の減額や最高税率も50%から55%への引き上げが検討されています。
また、この増税(特に富裕層向け)の動きは世界的なムーブメントになっており、アメリカでも富裕層増税に肯定的な発言をくりかえしていたオバマ大統領が再選されました。現行のアメリカの所得税の最高税率は35%であり、フランスのようにいきなり70%超というのは考えにくいかもしれません。しかし、今後フランスでの増税政策の結果が、アメリカや日本など他の国の税政策に与える影響は大きいと思われます。
参考:お勧め雑誌記事の紹介〜クーリエ・ジャポン【1%のエリートはこう考えている】2/2〜
富裕層の海外脱出は昨年の震災以降、日本でも関心を持つ方が増えています。
実際に、日本でもこの数年で、HOYAの鈴木CEOがシンガポールへ、ベネッセの福武会長がニュージーランドへ、サンスターの金田会長がスイスへ、バルスの髙島社長が香港へと、ビックネームが動き出しています。海外移住による税制が問われた武富士の裁判も記憶に新しい所です。
フランスの今後の動きや事態の成り行きを見守ることは、今後の日本の未来の姿を占う意味でも重要なことといえるでしょう。
【参考】
財務省:個人所得税の国際比較
世界経済ネタ帳:世界の国・地域
Bloomberg:仏大統領:富裕層への課税、撤回しない-増税は愛国心と説明
日経新聞:ルイヴィトンCEOも脱出? 仏富裕層増税の苦悩
BY TOMB