はじめに
本連載ではREITの基本、種類、具体例、今後の動向等について解説する。不動産投資や投資信託の経験はあるが、REITの経験はない、といった方も多いだろう。そこで【第2回】【第3回】では投資信託や不動産投資と比較した際の違いやメリットについても紹介する。
実際にREITをポートフォリオに加えることがないとしても、投資家として基本的なことは知っておいた方が良いだろう。株式や仮想通貨の取引に直接的に役立つかどうかは微妙だが、投資活動では知見と選択肢を広げておいて損はないだろう。
不動産投資信託であるREITは16兆円の市場規模
REITとは、Real Estate Investment Trust(不動産投資信託)の略称で、投資家から資金を集めて不動産を運用して得た賃料収入等を元に投資家に分配する金融商品である。J-REITといわれる証券取引所に上場しているREITが市場の90%を占める中心商品だ。REITのファンドを不動産投資法人として上場することで、株と全く同じように売買出来る仕組みだ。それ以外には、私募ファンド、国内外の上場REITに投資する公募投資信託、東証REIT指数に連動するETFなどがあり全部含めると13兆円弱の市場になっている。
REITは、不動産投資法人が投資する対象不動産によって、「オフィスビル系」「レジデンシャル(住居用マンション)系」「商業施設系」「物流施設系」「ホテル系」「ヘルスケア系」などに分かれている。対象不動産によって、利回りに差があったり、J-REITとしての株価の人気も違ってくる。
また、REITによる物件取得には不動産所得税の軽減措置が適用されている。 では、具体的にREIT投資の「魅力」にはどのようなものがあるのだろうか? 3つの大きな魅力を解説しよう。
REITの一番の魅力は利回りの高さにある
REITの魅力の一つに利回りの高さがある。11月9日時点のJ-REITの平均分配金利回りは4.16%となっている。日銀のマイナス金利導入後、10年国債の利回りも史上初めてマイナスに転じ、超長期債を含めても日本の国債で1%を上回る利回り債券はなくなった。株式の利回りは債券よりは高いが、東証1部の平均で2.15%程度だ。J-REITの分配金利回りの高さは飛び抜けている。
J-REITは、制度上利益の90%超を分配すれば法人税が課税されない仕組みであるため、株式と比べても高い分配金を得ることができる。また、長期に安定した賃料を生む不動産を投資対象としているため、一般の株式会社と比べて収益予想の確度が高く、分配金が安定しており、インカムゲインとしてふさわしい特徴を持つ投資商品だ。
高利回りでありながら、キャピタルゲイン(値上がり益)も狙えるのがREITの魅力でもある。一般的に、インフレ時には不動産の資産価値や不動産賃料がスライドして上がる傾向がある。不動産の賃料上昇はREITの分配金の増加要因になり、資産価値の増加は売却時のREITの売却益を増加させる。したがって、REITは、インフレ時、不動産が値上がりしている時、オフィスの需給がタイトになる時、ホテルの稼働率が高い時など、経済環境と対象不動産によって分配金が増え、株として値上がりすることが期待される。インフレヘッジしても最適だ。