自動車業界の世界地図が変わる。次世代自動車であるEV(電気自動車)、FCV(燃料電池者)の開発は、世界の自動車会社が生き残るため、もはや待ったなしの状況である。果たして日本の自動車メーカーは生き残ることができるのだろうか。地球規模で変革期を迎える自動車セクターを概観してみよう。
自動車業界の世界地図が大きく変わる
次世代自動車の開発は、世界のCO2排出量削減という環境面への取り組みから始まった。次世代自動車と自動運転という技術革新は、自動車産業の世界地図を大きく書き換える可能性が高まっている。次世代自動車では、既存のグローバルな大手自動車メーカー間だけでなく、米EVのテスラ・モーターズや中国資本などで創業された米EVベンチャーのファラデー・フューチャーなどEV専業メーカーとも競っていかねばならない。また、自動運転の分野ではGoogleやAppleといったITジャイアントが参戦してきている。
グローバルでトップクラスの自動車メーカーとして生き残るために、既存の大手自動車メーカーも必死だ。トヨタ <7203> がダイハツ <7262> を完全子会社化させてグローバル戦略を一本化したのも、ルノーと日産 <7201> が提携関係の見直しに動いているのも、グローバルでの自動車産業の変革に対応するための流れだろう。
次世代車は電気と水素の戦い
次世代自動車の開発競争は、EVとFCVに絞られてきた。現状では米国、中国などはEVに力を入れており、欧州はEVとディーゼル、日本はFCVとEVそれぞれの開発が進む勢力図になりつつある。ディーゼルはVWのデータ改ざんの影響もあり停滞気味だ。EVとFCVは共存することも可能なのだが、クルマの開発だけでなくインフラにも多大な投資が必要なため、最終的にはどちらかが淘汰されていく可能性が強いだろう。
EVのメリットは、エコカーとして先行したため車両本体価格が安くなってきていること、充電のインフラが充実してきていることがあげられる。電気の値段もガソリンに比べるとかなり安い。デメリットは、1回の充電での航続距離が短いこと、充電時間が長いことだ。
FCVのメリットは、1回の燃料充填での航続距離が長い、燃料充填時間が短いことで、EVの欠点をカバーしている。走行中にCO2を全く出さないゼロ・エミッションだ。燃料である水素の値段は電気とガソリンの中間になる。デメリットは、現状では車両本体価格が高く、水素ステーションなどのインフラは未整備でこれから巨大な設備投資が必要となることだ。
日本の自動車メーカーが生き延びるためには、官民を上げての総力戦が必要だろう。動力を供給するステーション網などの社会インフラの整備が急務だ。先行するEVでは、EV普及を促進するため、政府の補助金に加え、自動車メーカー4社が資金支援することで充電インフラの整備を急拡大させてきた。FCVに関しても、トヨタ、日産、ホンダの大手3社が水素ステーションの整備を促進するため、各社協力して水素ステーションを運営するインフラ事業者に対して運営費を支援することが決まった。こういった矢継ぎ早の施策をすすめることが世界の次世代自動車の覇権をとるために必須だろう。
自動運転の主導権争いからも目が離せない
次世代自動車は、すでに自動車メーカーだけの戦いではない。パーソナル・コンピュータがそうであったように、自動車も新しいテクノロジーとインターネットによる技術革新で、車体は共通のプラットフォーム化し、部品はモジュール化してくる可能性がある。EVもFCVも動力はモーターだ。自動車メーカーが経験を積み重ねてきたエンジンではないので、他業種からでも参入が容易と見られている。中国や台湾のECMが自動車を大量生産し、ソフト部分のみを自動車メーカーが提供するような構図になるかもしれない。
GoogleやAppleが狙っているのもその分野だ。将来は台湾の鴻海が作ったAppleのiSmartCarが量産されているのかもしれない。昨年12月、フォードとGoogleが自動運転車の開発・生産で提携交渉を進めていることが明らかとなった。近未来を感じさせる提携である。
ITジャイアントは、特に得意とする自動運転に注力している。自動運転は日本では2020年の東京オリンピックをめどに、米国ではさらに前倒しで施行されるべく官民共同で進められている。
株式市場では自動運転関連銘柄が賑わう
次世代自動車のベンチャーであったテスラ・モーターズは、電気自動車がガソリン車を超えられることを証明したいと願ったシリコンバレーのエンジニア数名により、2003年に設立された。2012年には世界初のプレミアムEVセダンであるモデルSを発売した。同社の株価はEVのパフォーマンスとそのスタイリングから人気化し、2012年末の33ドルから2014年9月高値の291ドルまで8.8倍になった。
米国株式市場では2014年から2015年にかけて、自動運転関連銘柄も賑わった。米モービルアイ社は自動運転向けの半導体や先進運転支援システム(ADAS)を自動車メーカーに提供している。2014年8月にIPOとなり、自動運転関連銘柄として人気化。同社はTwitter以来の大人気のIPOとなり、初値の36ドルから2015年8月高値の64ドルまで77%上昇した。
一方、日本ではテスラのような次世代自動車の専業メーカーは存在しないため、株式市場のテーマとしては自動運転関連銘柄に注目が集まっている。
測量・土木ソフトのアイサンテクノロジー <4667> は自動運転に欠かせない車載用の道路や路面の3次元ナビゲーションシステムを得意としており、自動運転関連銘柄のシンボルストックとなった。昨年10月に内閣府の自動運転関連の調査業務を受託したところから、株価急騰劇がスタートし、当時の2000円が2016年1月には9490円と4倍以上に急騰した。
自動運転関連銘柄の人気化には、今年にもIPOすると見られている自動運転技術の有力ベンチャーZMPの存在も大きい。同社は、アイサンテクノロジーのほか、アートスパーク <3663> 、テクノスジャパン <3666> などと提携している。また、フューチャーベンチャーキャピタル <8462> はZMPの株主と伝えられており、この4銘柄が自動車運転銘柄の本命として賑わっている。(ZUU online 編集部)
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