電気自動車,テスラ,Letv
(写真=ファラデー・フューチャー「FFZERO1コンセプト」Webサイトより)

「IoT」ーーそれは世の中に存在するあらゆる「デバイス」に通信機能を組み込み、インターネット接続や相互通信により、自動認識、自動制御、遠隔計測を実現することで新たな価値を創造する。中国のインターネット市場で強力なブランドネームを確立した「Letv」が、その IoT ビジネスで攻勢を強めている。

中国版 Netflix とも呼ばれる同社は、ネット動画配信事業で急成長を遂げたが、近年は動画コンテンツにとどまらず、インターネットTVやPC、スマートフォンなど様々な分野の「デバイス」で各社と戦略的パートナーシップを締結し、勢力を拡大している。ちなみに、米誌Forbesによると Letv 創業者のチャ・ユエティン氏の個人資産は推定79億ドルで、中国で17番目の大富豪とされている。そんなユエティン氏の IoT ビジネスへの野望は、家電製品にとどまらず「未来のデバイス」高級EV(電気自動車)の開発競争にまで及んでいる。

競合からの人材引き抜きと自社株売却

今年1月、英自動車メーカーのアストンマーティンは、最新の技術を盛り込んだ次世代車ラピードSを公開した。ラピードSには、センターコンソールにHDタッチパネル、メーターパネルに12.2インチのディスプレイを装備し、新たな音声認識システムや遠隔監視システムなどを搭載している。これらの技術は、前述「Letv」との戦略的パートナーシップによって提供された「IOV(インターネット・オブ・ザ・ビークル)」システムによるものである。

Letvの戦略的パートナーシップは、既存の自動車メーカーにとどまらない。米ロサンゼルスに本拠を置くEVベンチャーのファラデー・フューチャーは、世界最大の家電見本市 CES 2016 でEVコンセプトカー「FFZERO1コンセプト」を発表した。同社によれば、このクルマは一人乗りで4つの駆動モーターによる1000馬力の出力を誇り、停止状態から時速約100kmまでの加速が3秒程度、最高時速は320kmを超えるという。さすがにこれが市販化されるとは考えにくいが、それでも業界関係者を驚かせたのは、同社の設立からわずか18カ月でコンセプトカーを完成させたことである。この猛烈な開発スピードを可能にした要因の一つとして、同業他社からの大量の人材引き抜き工作が指摘される。

同社の経営幹部をはじめとする従業員は、ジャガーやテスラモーターズ、ロータス、フォード、BMW、GMといった自動車メーカーから研究開発、製造、人事、調達担当が多数スカウトされたという。人材確保には当然多額の資金が必要となるが、海外メディアではチャ・ユエティン氏がファラデー・フューチャーの設立に先立ち12億ドル相当の自社株を売却したとも伝えられている。その真偽はともかく同社の共同出資者で戦略的パートナーシップの関係にあるユエティン氏の存在は非常に大きいと言えるだろう。

カウンターアタック狙う「テスラキラー」

ちなみに、ファラデー・フューチャーの社名にある「ファラデー」とは、英国の化学者・物理学者のマイケル・ファラデー(1791~1867年)にちなんでいる。ファラデーは直流電流を流した電気伝導体の周囲の磁場を研究し、物理学における電磁場の基礎理論を確立した人物だ。この社名からも、同社が電気技師・発明家のニコラ・テスラ(1856〜943年)を意識していることは想像に難くない。

ハイエンドに特化したEVベンチャーの先駆けとなる「テスラモーターズ」の創業が2003年、同社初のコンセプトモデルが完成したのが2008年と開発に5年を要し、さらに市販モデルの発売に2年(2010年)を費やしている。テスラの開発も決して遅いわけではないが、ファラデー・フューチャーのわずか18カ月の開発スピードは同業他社にとって脅威に映るだろう。

ファラデー・フューチャーは今年ネバダ州で10億ドルを投じたEVの生産工場の建設に着工するとともに、数年内に市販モデルの販売に乗り出すことも明らかにしている。米メディアで「テスラキラー」と呼ばれる同社であるが、ユエティン氏の野望は、すでにテスラにカウンターアタックを仕掛ける「ライン取り」を描いているのかもしれない。(ZUU online 編集部)

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