驚き、反発が交錯する自治体の反応
総務省の通知に対し、ふるさと納税で多額の寄付を獲得してきた自治体は驚きを隠さない。長野県飯山市は地元にパソコンメーカー・マウスコンピューター(東京)の工場があることから、パソコンやタブレット、ディスプレイを特典に加えている。
市は地元産業の振興を狙い、導入したが、実質2000円でパソコンが買えると評判になり、すぐに品切れになるほどの人気ぶり。工場も人員増を図るなど、雇用の創出にも効果を上げているという。
市企画財政課は「通知があった以上、対応を検討しなければならない。地域に波及効果が出始めた矢先だけに、戸惑っている」と言葉少なに語った。
千葉県大多喜町はふるさと感謝券を特典に入れ、2015年に県内トップの15億円以上を集めた。感謝券はネットオークションで換金できるため、寄付額の96%が感謝券を求め、町税収入の約10億円を上回っている。
1万円の寄付に7000円相当の感謝券を送っていたが、総務省の指導で6000円相当に引き下げ、インターネット上の申し込みサイトに転売禁止を明記したばかり。町企画財政課は「これから3役と急いで対応を話し合いたい」と戸惑いを隠せない。
求められる自治体側の改善策
群馬県中之条町は寄付額の50%相当の感謝券を送っている。感謝券は町内の旅館などでしか使えず、地元に観光客を招き入れる狙いもあった。感謝券がネットオークションで販売されていたことから、券面に赤字で転売禁止と明記した。
町企画政策課は「地域振興に役立ち、転売対策も手を打ったのに、総務省の通知が来ればやむを得ない。発行を続けるために何か良い解決策があればいいのだが」と対応に頭を抱えている。
別の自治体からは「地方に競争をあおりながら、自治体の裁量を認めない国のやり方はどうかしている」と反発する声が上がっている。これに対し、総務省市町村税課は「地域のために寄付するのが本来のふるさと納税のあり方。趣旨に反さないよう良識ある対応をしてほしい」としている。
ただ財政が苦しい自治体にとり、ふるさと納税は最も手っ取り早い収入の確保策だ。今の過熱ぶりが続けば、総務省がいくら通知を出しても、抜け道を探す自治体が出てくるだろう。自治体間で協議会などを組織し、ガイドラインを設けるなどの対策が求められそうだ。
高田泰 政治ジャーナリスト
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。
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