3月米住宅着工,許可件数
(写真=PIXTA)

結果の概要:住宅着工、許可件数ともに前月から大幅に減少し、市場予想も下回る

4月19日、米国センサス局は3月の住宅着工、許可件数を発表した。住宅着工件数(季節調整済、年率)は、108.9万件(前月改定値:119.4万件)と前月比▲8.8%(前月改定値:+6.9%)の大幅な減少となり、市場予想の116.6万件(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も下回った(図表1、図表3)。

住宅着工に先行する住宅着工許可件数(季節調整済、年率)は、108.6万件(前月改定値:117.7万件)と、こちらも前月比▲7.7%(前月改定値:▲2.2%)の大幅な減少となり、市場予想(117.7万件)も下回った(図表2、図表5)。

52765_ext_15_0

結果の評価:単月の数値だけで判断するのは早計も、住宅市場のモメンタム鈍化を示唆

住宅着工件数は、2月の一戸建て住宅の件数が84.1万件と07年10月以来の高水準となっていたこともあり、前月から減少することは予想されていた。

しかしながら、前月数値が上方修正されたとは言え、マイナス幅が一桁台後半となったことは予想外の弱い結果となった。さらに、3ヵ月移動平均でみた場合でも16年入り後、はじめて前月比で減少に転じており、住宅着工件数のモメンタムが低下していることを示している。

住宅着工件数(前月比)の地域別寄与度をみると、前月の反動もあり全体的にマイナスとなる中で北東部が唯一のプラスとなった(図表4)。

もっとも、毎月の変動を均すため、こちらも3ヵ月移動平均でみると、西部こそ前月比+1.5%とプラスを維持したものの、北東部が▲9.0%、中西部▲2.9%、南部▲1.9%と軒並みマイナスとなっており、地域別にみても全体的にモメンタムは下がっているとみられる。

52765_ext_15_1

一方、住宅着工件数の先行指標である住宅着工許可件数の前月比は、16年1月の横這いを挟んで15年12月からマイナスが持続しており、こちらもモメンタムが下がっている(図表5)。

許可件数を一戸建て、集合住宅で分けてみると、集合住宅が前月比▲18.6%と2桁の大幅な落ち込みを示す一方、一戸建てが▲1.2%に留まるなど、集合住宅の減少が目立った(図表6)。

さらに、前年比でみても許可件数全体で+4.6%となる中で、一戸建てが+13.2%と2桁の増加となる一方、集合住宅は▲9.3%とマイナスになっており、昨年好調であった集合住宅のモメンタムが下がっていることが分かる。

52765_ext_15_2

全米住宅建設業教会(NAHB)が先日発表した住宅市場指数では、足元の新築住宅販売が15年5月以来の水準に低下したほか、総合指数も政策金利引き上げ観測が強まった15年10月の65をピークに低下しており、4月は3ヵ月連続となる58に留まるなど、建設業者のセンチメントの回復も足踏み状態となっている。

もっとも、雇用不安の後退が持続する中、住宅市場指数の中でも6ヵ月先の住宅販売見込みは、直近では小幅改善しているほか、住宅ローン金利は15年12月の政策金利引き上げ後、逆に低下していることから住宅市場を取り巻く環境は悪くないとみられる。今後、住宅市場回復のモメンタムの低下が続いていくのか、来月以降の数値が注目される。

窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

【関連記事】
米国経済の見通し-個人消費主導の景気回復持続も、懸念される資本市場の実体経済への影響
【3月米雇用統計】失業率は悪化したものの、労働参加率が改善しており問題なし。労働市場の回復継続を確認
【3月米FOMC】予想通り、政策金利据え置き。成長率、物価見通しを下方修正
本格化するアメリカ大統領選挙
米国経済の見通し-個人消費主導の景気回復持続も、懸念される資本市場の実体経済への影響