博報堂,P&G,広告代理店,イノベーション
(写真=Webサイトより)

自社だけでなく他社が持つ技術、アイデア、サービスなどを組み合わせ、新たなビジネスモデルや製品開発、サービス開発につなげる方法論が「オープンイノベーション」だ。イノベーティブなビジネスを行うため、企業は社内リソースや技術のみに頼るのではなく、他の企業や大学との連携を積極的に活用することを指す。

従来、企業は競合優位の技術を保有するために、自社だけで研究・技術開発を行ってきた。このようなクローズドイノベーションは、技術が日進月歩で進化していた時代には極めて有効だった。技術やアイデアは自社で囲い込むことは当たり前だった。しかし技術がより成熟した今日、企業間での技術開発の能力はますます拮抗し、競合優位性を持つ技術開発を自社のみで行うことには多大な時間と労力、そしてコストが大きな負担となってきた。

そこで自社が求める技術やアイデアを敢えてオープンにし、大学や他社の技術のライセンスを受けたり、外部から広くアイデアを募集するなど、社外と積極的に連携する、オープンイノベーションを採用する企業が現われている

P&Gの「コネクト&デベロップメント」

製造業でのオープンイノベーションで代表的な事例として挙げられるのがP&Gだ。世界有数のR&D部門を持つP&Gは従来、独自の技術を自社で研究・開発し製品化することに長けていた。これが競合企業に対する大きなアドバンテージとなっていた。

これを可能にしていたのは、業界をリードするその豊富な資金と人材だった。しかし成熟した日常品の世界では、ユニークな製品を生み出すことがますます難しくなってきた。

そこでP&Gが選択したのがオープンイノベーションだ。「コネクト&デベロップメント」と命名されたこの事業は、従来はクローズドであった技術開発を外部に公募し、自社の革新的な製品開発に活かすことを目的としている。募集されている分野は、パーソナルケア、ビューティー・グルーミング、ホームケア、生産といったP&Gの中核事業での技術はもちろんのこと、粧業品にとって重要なパッケージ開発やデジタルなどコミュニケーション分野にまで広範囲に及ぶ。実際に他社技術を採用したユニークな製品を開発し販売している。

他社との連携で難しいのが、ニーズとシーズのマッチングだ。互いに求めるものが何処にあるのかをリサーチする困難さが大きなハードルになる。P&Gがユニークなのは、求める技術やアイデアを専用のウェッブサイトで公開し、まさに「オープン」に公募している点だ。敢えてオープンにすることで、より多くの技術やアイデアを集めることを重視している。

P&Gは、クローズドイノベーションよりオープンイノベーションに革新的な製品を生み出す可能性を見出した。従来の自前主義を捨てて革新性を重視した、経営戦略の大転換と言える。

博報堂は新会社「QUANTUM」を設立

オープンイノベーションは元来はユニークな技術を開発することから端を発しているが、この動きは今では製造業以外にも広がっている。日本の代表的な広告会社である博報堂までもが、オープンイノベーションに参入しビジネス拡大を狙っている。

博報堂から分社したQUANTUM(クオンタム)は、オープンイノベーションを推進する会社として位置づけられている。もともとは2014年にTBWA\HAKUHODO\QUANTUMが設立されていたが、今年4月にTBWA HAKUHODOから「株式会社 QUANTUM」を分社化したかっこうだ。

同社は大手企業とスタートアップの共同事業開発モデルであるコーポレート・アクセラレーターの運営や、パートナーの持つ技術や顧客基盤を基にした新規事業の立ち上げ、自社事業としてのIoTプロダクト開発など、様々な領域において新事業を手がける。

従来の広告会社のビジネスはコミュニケーション領域に特化していたが、成長の可能性を自社の取引先であるクライアント同士のオープンイノベーションのコーディネートや、広告ビジネスに捉われない新規事業に求めようとしている。

広告会社は技術開発の点ではメーカーにはかなわないが、生活者の理解とアイデア創出にその強みがある。また急速に進むデジタルの波がそれを後押ししている。QUANTUMは自社内のラボに3Dプリンターなどを保有し、思いついたアイデアをすぐにカタチにできる環境とスタッフを保有している。またワークショップを開催し、クライアント企業や大学とのアイデア交換などに積極的に関わっている。

これらの動きは、従来の広告市場の大きな伸びが期待できないために広告以外の新規事業を早く立ち上げなければ、という焦りとも言える。しかし一見、従来のコミュニケーション事業とかけ離れたビジネスのように見えているが、すべてのモノがインターネットに繋がる世界、いわゆるIoTが進むにつれてコ、ミュニケーションとモノづくりの境界が融合していき、生活者の視点からは両者の分け隔てが意味をなさなくなることを見据えて先手を打っているとも言える。

現在はオープンイノベーションの黎明期であり、それをいち早く事業化することが優位性に繋がっている。だがオープンイノベーションを採用する企業が増え環境が整うほど、それを戦略的に進める新たな視点やアイデアが求められるだろう。それに必要なのは、現在の自社の事業やビジネスモデルに捉われない、「アイデア」を生み出すより柔軟な発想だ。ビジネスのネタは何処に転がっているか分からないのだ。これからはそのネタをユニークな視点で見つけられるかが勝負になるだろう。(ZUU online 編集部)

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