オーストラリア沿岸地域には、毎月遠い国から今にも沈みそうな船で多くの人がやってくる。
「アサイラム・シーカー」と呼ばれる難民は一旦施設に入ることになるが、その施設は国内に留まらず、隣国まで拡大。莫大な費用と人員を費やした。良く言えば弱い立場の人達に優しい国でもある。
「政府は外交に必要以上の費用をかけ過ぎている」--。多くのオーストラリア人が税金の使い先に不満を抱いている。
連邦政府が打ち出した「ワーキングホリデー課税」は2016年6月から導入される。4年間でおよそ540億豪ドル(4億3000万円)を生み出す見通しである。
自分の子供より他人の子供の面倒に忙しくなる。雇用問題に直面している国内若年層の悲鳴は、いまだに届いていないのだろうか。
ワーホリ課税で救おうとしているものとは?
1ドル稼ぐごとに32.5セントの税金が加算される。1万円稼いで3250円を税金で持って行かれるなど尋常ではなかろう。
自由党ジョン・ホッキ―氏は国会でこう述べた。
「年間18万人がオーストラリアでのワーキング・ホリデー・ビザを取得している。年々増加する海外からのワーカーが国内若年層の雇用問題を深刻化させている恐れがある。」
18万人のワーキングホリデー滞在者が、3万2000人の若年層失業者に影響を及ぼしていたのであろうか。「自分達の子供の面倒を先に見なければ」という、連邦政府の形相がうかがわれる。
オーストラリア国民に対してはうなずけるものの、正規の手続きを踏んでやってきた夢ある若者には、かなりの痛手だろう。
ちなみにオーストラリア国民・住民は1万8200豪ドルまで無課税である。ということは、ワーキングホリデー滞在者はそれ以上に税金を払うことになる。
課税ゼロの魅力は強し ニュージランドへの流動は想定内
日本でのワーキングホリデー人気国1位はオーストラリアという。治安も良く人がフレンドリー、マリンスポーツが盛んなど魅力の多い国である。
2位はカナダ、そして3位にニュージーランドが入っている。やはり、治安の良さや豊富な自然、アットホームな雰囲気が人気のようだ。
オーストラリアとニュージーランド。どちらの国旗も、英国占領地であったことを示すユニオンジャックを掲けているものの、常に南半球に位置する“親と子”の関係にあった。
しかし、今回のワーキングホリデー課税を受け、「子が親を超す」チャンスが降って湧いたかもしれない。
ワーキングホリデー先でで人気のあるタスマニア州。ツーリズム関係会社のCEOは「ニュージーランドでは課税されない。自ずと人は流れるだろう」と頭を抱え始めている。
毎年多くの人を受け入れてきたタスマニア州の雇用主は、複雑な思いに焦れている。確かに「タックス・フリー」の効力は偉大だ。
それでは、ワーキングホリデー滞在者に何か成す術はないのであろうか?
逃げ道はノン・レジデントはなく「レジデント」になる
課税の明暗を分けるのは、「ノン・レジデントかレジデント」かということである。
ワーキングホリデーでオーストラリアに訪れる場合、多くの人が「ノン・レジデント=非住民」扱いになり、今回の課税対象になってしまっている。
しかし、ワーキングホリデー滞在者でも、「レジデント=住民」としてアップグレードできることがある。
例えば、長期で1つの場所に滞在する場合、フラットやユニットなどリース契約をする。または、運転免許を取得したり、ローカルクラブのメンバーになったりと、いわゆるオーストラリア国民・住民と同じような生活パターンを送っている場合、「旅行者」と言うより「住民」に近いカテゴリーに位置するようになる。
この場合、それを証明する書類をもって税金関係を取り扱う「Australian Taxation Office」に行ってみよう。ここでローカル(その地方の人間)として住み、働き、コミュニティにも関わっているということを証明するのである。
オーストラリアの運転免許証、リース契約書、クラブの会員証など数が多ければ多いほうが良い。そして、そこで「レジデント」として分類されれば、課税は免れる。
違ったロケーションで様々な体験をしたいという人には厳しいかもしれないが、オーストラリアは親日国でもあり、話を聞いてくれる国民性でもある。実際、レジデントになった人も少なからずいるのだ。
オーストラリアでのワーキングホリデー滞在者の声は、「生活していけない」のワントーンではあるが、それでも魅力指数が課税の事実を上回るという少数派もいる。
いずれにせよ、課税と引き換えに何をアピールしていくのか?政府の対応を始め、ツーリズム業界もこれからが本当の勝負時と言えよう。(トリー・雪香、豪州在住のフリーライター)
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