働いている人にとっての大きな悩みとは一体何か?それは時間がないことだ。特にサラリーマンや自営業者というのは自分の時間を売っている職業だから、余計にそう感じるだろう。
「いやいや、私は自分の技術を売っています」という人もいるかもしれない。しかし自分がいなければ商売にならない以上、結局は時間を売っているのと同じこと。そういう人は時間単価が高いということである。
スピードを追求するのは正しい選択なのか?
あるビジネス雑誌編集長の話によると、スピード仕事術に関する記事は、ビジネス誌で常に5本の指に入るほどの人気ぶりだそうである。
多くの人は、クオリティの高い仕事を早くたくさんこなし、それでいい成績を上げようと考えているが、それは間違っている。速さを追求すれば、どうしても質が落ちるのはやむをえない。手順を要領よくして時間をつくろうとしても、5分10分増えたところで、人よりも抜きん出た仕事はできない。「効率アップ」という考え方は、所詮はルーティンワーク内の話でしかないのである。
時間がないというのは、要はやることがありすぎる状態のことをいう。仕事が「やってもやっても終わらない」となると、人は通常、残業など時間を延ばすことで対応しようとする。しかしそれでは十分な休息時間を確保できないため、翌日また残業するハメになり、悪循環に陥る。
そこから抜け出すには、発想の転換が必要である。それは仕事を増やそうとすることではなく、減らすことを考えることである。
時間をつくるにはどうしたらいいのか?
「仕事が減らせるなら苦労はしない」と感じる人もいると思うので、筆者の事例をお話しよう。
その前に、筆者の略歴を簡単に紹介しておく。筆者は独立する前、19年間サラリーマン生活を送っていた。前半の9年間は芽が出ず、平社員に甘んじていたが、会社が50年ぶりの赤字を出してリストラを決行し、筆者も30歳にしてその候補者となった。そこで一念発起し社内ベンチャー制度に応募。立ち上げた事業がうまくいって33歳の時に最年少役員に選出された。
筆者が初めて仕事を捨てる決断をしたのは、まだ平社員だったときのこと。会社がリストラを行った結果、多くの人が会社を去り、後に残った人たちで残された仕事もやらなければならず、筆者の仕事量もそれまでの2倍強になった。
こうなるともう、スピードや効率、残業では対応不可能となる。そこでやむなく筆者は、やるべき仕事とそうでない仕事をふるいにかけ、自分で不要と判断した仕事を机の中にしまっておいたのである。
もちろん、後で「なんでやらないんだ?」と怒られた仕事もあり、それは残業してでも対応した。しかしそうやって復活した仕事は、やめた仕事の半分ほどだったのである。
「捨てる」のは正しい選択
「捨てる」という考え方自体は、どこかで耳にしたことがあるかもしれない。「それは知っているけど、何をどうやって?」というのが、本文をお読みの方が抱いている疑問ではないだろうか。
「どの仕事を捨てたらいいのかわからない、どれも重要で捨てられない」と感じている人は、筆者と同じことをすればいい。つまり、一度自分がパンパンになるまで「仕事を詰め込む」のである。
「時間がもっとあれば」と思っているうちは、まだ差し迫った状態とはいえない。選べないのなら、選ぶしかない状況になるまで自分を追い込むことである。
実は会社には、役目を終えて不要になった仕事がたくさんある。会社は常に、時代の変化に対応することを求められているからである。
一例を挙げればポラロイドカメラやポケットベルなど、かつては一世を風靡しながらいつの間にか消えてしまったものは星の数ほどある。それだけ新しい事業が生まれては消えているということだ。
会社の事業が変わればやるべきことも変わり、そうなれば必要とされる仕事も変化していく。
一方で、毎日会社で働いている人にとっては、そうした大きな変化というのは感じにくい。世の中に革新的なサービスが生まれても、多くの人は昨日と変わらない日常を送っており、明日もその生活が続くと思っている。だから多くの人は、求められることが変化していても気がつかない。このギャップが、不要な仕事を生むのである。
やるかやらないかを決めるのは自分
驚くかもしれないが、会社にはあなたの仕事が必要かどうかという判断はできない。数人しかいない会社なら話は別だが、ある程度の人数になってくれば、会社もいちいち各自の仕事内容を細かくは見ていない。
運がよければ上司が気づいてくれるかもしれないが、自分のやることで手いっぱいの上司も多い。あなたのやっている仕事が会社にとって必要かどうかを一番正しく判断できるのは、あなた自身なのである。
仕事を捨てることは、組織の利益にも合致する。なぜなら、あなたがそこで不要な仕事を終わらせれば、あなたの後を引き継ぐはずだった人の時間までプールしたことになるからである。どうか怖がらず、勇気を持って仕事を捨てて欲しい。それが自分のためであり、会社のためでもある。
俣野成敏(またの なるとし)
1993年、シチズン時計株式会社入社。31歳でメーカー直販在庫処分店を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)や『一流の人はなぜそこまで◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に10万部超のベストセラーに。2012 年に独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、「お金・時間・場所」に自由なサラリーマンの育成にも力を注ぐ。
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