トヨタ自動車 <7203> による今3月期の大幅減益予想発表から一夜明けた12日、同社の株価は4月11日の年初来安値(5256円)を割り込まずに踏みとどまると、その後切り返して下げ幅を縮小した。全体相場への影響もひとまず限定的にとどまり、当初懸念された「トヨタ・ショック」をマーケットは回避した。
ショック回避の背景には3つの要素が挙げられる。
1つは会社側の保守的な収益前提。今期の連結営業利益予想1.7兆円は、前期比で1.15兆円(40.4%)のマイナスだが、このうち実質1兆円超が為替の円高によるもの。ただ、想定レートは1米ドル=105円をはじめ、1カナダドル=80円、1ルーブル=1.55円と時価(それぞれ108.9円、84.7円、1.68円)に対し円高に設定しているものが目立つ。
同社は米ドルの場合1円の円安で営業利益が420億円押し上げられる。また、今期発生する経費のうち、タカタ <7312> 関連のリコール(回収・無償修理)に伴う一時的な費用だけで1500億円程度に上るとみられ、実態よりも利益の水準が抑制されているとの見方が強い。
2つ目は株主還元だ。決算と併せ、上限5000億円・1億株(発行済み株式数の3.24%)の自社株買い枠を設定。「安定的・継続的な還元を実施」(豊田章男社長)するという姿勢が確認されたことで、長期投資家の安心感につながった。
3つ目に、トヨタの決算発表時期が相対的に遅かったこともショックを軽減させた理由だと考えられる。
アナリストの予想を単純に平均したコンセンサスと比べると、同社の営業利益計画は1兆円超下ブレした。しかし、既に各社が厳しい新年度の見通しを公表していたことで、実際の市場の期待値はより低かったもよう。また、グループ企業が軒並み1ドル=105円の為替前提を事前に示していたことも、結果的に悪材料の先食いとなった可能性がある。
もっとも、同社が正念場にあることに変わりはない。円安という息の長い追い風が吹き止んだいま、真価が試される局面だ。会社側は成長投資を継続する一方、工場の集約といった生産性の改善を進めている。また、人工知能(AI)など自動車事業の枠に収まらない領域の育成にも注力していく。
市場評価は分かれる
この日の株価はウリ気配で始まり、前日比4.5%安の5380円で寄り付いたものの、最終的には1.4%安の5553円と小幅な下げにとどまった。SMBC日興証券では、中期戦略を見定めるとして目標株価7300円を継続。一方、みずほ証券は足元の厳しい環境を反映して目標株価を5500円(従来8100円》に引き下げるなど、市場の見方は分かれている。(5月13日株式新聞掲載記事)
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