株式投資になかなか一歩を踏み出せない人にとって、大きな疑問の一つが「なぜ株価が上がるのか?」ではないでしょうか。株式投資に詳しいライターに、投資家の間で最近話題となった企業(銘柄)を取り上げ、「なぜ株価が上がったのか?」を解説してもらいました。
カルビーの株価は4年で10倍
ご飯やパンに次ぐ「第3の朝食」として大ブレークしている「フルーツグラノーラ」。その「フルグラ」人気を作ったのがカルビーという会社です。
実はカルビーの株価はここ4年ほどで約10倍になっています。株式投資というと難しいように感じますが、カルビーの株価を押し上げるドライバーになったのがフルグラでした。今回はそんなカルビー株の魅力を紹介します。
上場は意外と最近
カルビーといえばもともとは、ポテトチップスやかっぱえびせん、じゃがりこなどで有名ですね。かっぱえびせんを発売したのが1964年の東京オリンピックの年ですからずいぶん前からある会社です。
ところが、上場したのは2011年と意外と最近です。2011年3月に東証1部に2100円で上場し、その後株価は2013年9月に11070円と2年半で5倍以上になりました。
値上がりしすぎて個人投資家が買いづらくなったため、カルビーは2013年9月に1株を4株に分割しました。したがって上場時に100株持っていた投資家は400株持っていることになります。
分割後の高値は2015年4月の5700円(2016年4月9日現在)ですから、株数が4倍になったことを考えると、上場時に株を買った投資家の時価は4年で10倍以上のパフォーマンスになりました。
「フルグラ」の売上5倍で株価も5倍
なぜこのように上場後、カルビーの株価が上がったのでしょうか?
そもそも企業が上場するメリットは資金調達がしやすいことにあります。調達した資金をもとに積極的な経営ができるようになります。
実際、カルビーは上場時に得た資金で海外展開を積極化しています。2009年に米ペプシコと業務提携、ペプシコの100%子会社のフリトレーが20%の筆頭株主になりました。そして2011年に上場し、米国や中国などの海外事業の拡大が業績や株価を押し上げるといったトレンドを固めています。
ただそれよりも株価を一番動かしたのは、フルグラの拡大でした。フルーツグラノーラは1991年には発売されていたのですが、2011年に商品名を「フルグラ」にしてマーケティングを強化しました。シリアルの朝食としての位置向上を狙う戦略にでたのです。
シリアル市場を変えた「フルグラ」
2011年に37億円だった売上は、12年には63億円となり、13年は95億円、14年は143億円、2015年には200億円に迫っているようです。わずか4年で約5倍。足下の3年でも年平均50%以上の伸びとなっています。フルグラはすでに、カルビーの売上の7%以上を占める主力製品になりました。
フルグラはシリアル市場でのカルビーのシェアを上げただけでなく、シリアル市場そのものを第3の朝食として拡大させることに大きく貢献する商品となったのです。
連続増配も魅力
カルビー株は人気が高いため、配当利回りは決して高くありません。2016年4月現在で0.8%程度です。ただし、会社は連続増配(配当を増やすこと)しています。上場前の2010年3月期が1株当たり6円の配当だったのが、上場以降毎年増配しており、2015年3月期には配当が28円にまで増えています。
株式市場では、連続増配企業が話題になります。たとえば花王は27年間増配を続けている企業として人気があります。花王は生活必需品のメーカーですので業績は安定しており、配当も毎年増えるので長期保有の株主が多くなっています。 連続増配企業は長く持ち続け、配当を再投資に回すことでトータルリターンが高くなります。
カルビーも、比較的安定した食品セクターなので、連続増配で長期保有の投資家を増やそうとしているのでしょう。 0.8%でも銀行貯金よりはずいぶん高いので長期投資に適する株といえそうです。
サプライズで「株主優待」
食品メーカーには株主優待で自社製品セットを贈る企業が多いのですが、カルビーは正式には株主優待を公表していません。外資系が筆頭株主であることもあって、株主優待で投資家を集めるよりも、配当で還元することが一番と考えています。
しかし、昨年9月末時点の株主には、サプライズプレゼントとして、フルグラ、ポップコーン、カルビーライトシリーズ(えびせん、チップス2種、さやえんどう)の合計6点を贈ったようです。正式な優待ではないので今後も続くかどうかはわかりませんが、サプライズがあるのも楽しいですね。
カルビーでも株価の変動率は高い
株式投資というとデイトレーダーのようにリスクをとって売り買いをしているイメージが強いですが、フルグラのように身近にあるヒット商品が株価を牽引することも非常に多く、じっくりと長期投資することが本道です。
アナリストの中にも、百貨店や電機量販店、スーパーなどに実際に出向き、何が売れているかをチェックする人も多いようです。普段から周りで流行っているもの、売れているものなどに気をつけておいて、その会社が上場しているかどうかを調べることが投資の基本かもしれません。
ただ、カルビーのように業績が安定成長していて人気のある株でも、相場の需給関係では下げることももちろんあります。昨年4月の5700円高値から昨年の10月安値の3745円まで、半年で34%下げました。もしNISA口座などで長期投資を考えているのなら株価が高い時は追わず、むしろ安いときに購入するスタイルがいいかもしれません。
(提供: DAILY ANDS )
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