「テンバガー」と言う言葉を聞いたことがあるだろうか。バガーとは野球の塁打の事を言うのだが、投資の世界では10倍になる銘柄に憧れを込めてテンバガーと称されている。
10倍になった銘柄には注目が集まるが、一方で、逆テンバガーとも言える、株価が10分1になる銘柄があるのも株式市場だ。ここでは、逆テンバガーをつかまないように2015年を振り返ってみたい。
2015年のテンバガーはFVCの15倍
逆テンバガーを見る前に、簡単に2015年のテンバガーを見ておこう。
2015年の騰落率ランキングで上昇1位は、東証JASDAQ上場のフューチャー・ベンチャー・キャピタル(FVC) <8462> だ。2014年末に189円だったものが2015年末には2877円まで上がっている。実に15.2倍だ。もう少し遡ると、2014年3月の安値105円から、2016年1月の高値3635円まで高騰しており、2年弱で34.6倍になっている。
2015年の値上がり率2位が東証1部のアイスタイル <3660> 8.7倍、3位が同じく東証1部(2015年11月までは東証マザーズ市場)のWSCOPE <6619> で6.4倍。それぞれ14年安値とその後の高値を比較すると12.8倍、11.6倍とテンバガーだ。
FVC <8462> は、未上場企業に投資する独立系のベンチャーキャピタル。2015年後半には次世代の自動運転が株式投資の一大テーマとなり、アイサンテクノロジー <4667> などが大きく買われた。自動運転の技術力が高く大型IPOになるといわれているZMP社の上場が近いという見方も自動運転銘柄を人気化させた。FVCはZMP社に投資しているという噂があることと、タイミング良く11月に2016年3月期に前の期の営業赤字から黒転するとの上方修正したことから人気化した。ZMPに投資している件は公式に発表されたわけでなく、あくまで市場の噂であることも人気化を助長したのかもしれない。
ちなみに、FVCは15年1月に3635円史上最高値をつけた後は4月に1277円まで下落、その間3ヶ月で64.9%下げている。直近5月27日は2097円。ピークからは大きくは下げているが2014年安値比ではまだまだテンバガーだ。次に2015年の逆テンバガーを見てみよう。
2015年の逆テンバガーに近い銘柄は6銘柄
実は、2015年の年間下落率では逆テンバガーという10分の1銘柄(90%下落)はない。下落率トップは、JASDAQ市場のブロッコリー <2706> で▲79.3%。70%以上下げた銘柄は6銘柄存在する。
ブロッコリー <2706> の場合、2014年12月の史上最高値から2016年の安値までで84.9%下げており逆テンバガーにかなり近い。
2015年年間下落率(上場廃止企業とETFを除く)
1.ブロッコリー <2706> /JQ/▲79.3%
2.ビーロット <3452> /東証M/▲77.8%
3.アクセルM <3624> /東証M/▲75.9%
4.エクストリム <6033> /東証M/▲73.4%
5.日ギア <6356> /東証2/▲73.1%
6.gumi <3903> /東証1/▲70.9%
昨年の下落率で70%を超える銘柄を年間下落率でなく、14年以降の高値から直近の安値で比較すると、完全な逆テンバガーになっているのはアクセルM <3624> 。その他の5銘柄も逆テンバガーに極めて近い不名誉な成績の銘柄となっている。
投資を長く続ける極意は、大きく損をしないことだ。ある意味テンバガーをつかむことより、逆テンバガーをつかまないことが大事だろう。昨年の逆テンバガーに近い6銘柄の共通点を分析してみよう。
「逆テンバガー」は過熱の反動、ゲーム、下方修正、IPOに注意
2015年の逆テンバガーに近い銘柄で共通しているのは、2014年に大きく上がっていた銘柄であることだ。それ以外では、ゲーム関連で主力の人気ゲームが陰りだして業績ピークアウト感が強くなった銘柄、下方修正した銘柄、IPOで人気化しすぎた反動などが共通項として多い。
ブロッコリー <2706> は、ゲームソフトの会社で、プレイステーション・ポータブル用の「うた☆プリ」が中心。アニメ系のゲームであり、関連のCDやグッズの販売も多い。アニメ関連として人気化、2014年は4月安値から12月高値まで3.5倍になっていたが、業績の下方修正を嫌気して人気が一気に離散した。
ビーロット <3452> は、不動産投資業で、中古のビルやマンションをリファービッシュし、価値を向上させて売却するビジネスモデル。2014年12月のIPO銘柄だ。IPO時の初値は公開価格の5.2倍となり、初値後も短期間でさらに倍近くまで急騰していた。
アクセルM <3624> は、ウェブビジネスで、コンテンツ配信、広告、モバイルゲームの3本柱としている。実は2014年にテンバガーだった銘柄だ。業績は2012年9月期をピークに下落基調となりテンバガーから一気に逆テンバガーとなった。
エクストリム <6033> は、スマホゲームの開発支援を行っている。エクストリムの2014年12月のIPO銘柄。初値は公開価格の4.0倍となり、その後初値から倍近くまで買われた。エクストリムの場合、決算は好調ではあるが、人気が過熱しすぎたためその後の下げが深くなった。
日ギア <6356> は、ギア、減速機などを主力とする機械メーカー。主に電力会社向けにバルブ開閉装置を納入している。2014年に大量保有報告で買い集めている投資家の存在が明らかとなった。その後も同社株の継続的な買いが確認されたことで、2014年に株価は3倍以上になった。2015年1月に成和は50%以上の株主となり、経営権を掌握し、経営陣も一掃し、敵対的買収が成功裏に終わった。買収が完結したことで株価がピークをつけている。
gumi <3903> は、ソーシャルゲーム、スマホゲームの大手で2014年12月に新興市場を飛び越えて東証1部に直接上場した。IPOで人気化しやすいウェブ関連銘柄のではあるが時価総額も大きいかったため初値は公開価格同値で始まった。ほぼ初値を高値として株価は下落トレンドとなった。
さらに追い打ちをかけたのが、上場わずか2カ月半で業績予想を下方修正したこと。単なる下方修正でなく15年4月期の黒字予想を4億円の営業赤字に転落するとしたからだ。さらには1月時点で30億円の借り入れを行っていたことを、3月になってから発表。投資家はgumiに対する不信感を強めた。
昨年の逆テンバガーは2014年に上げた銘柄の反動安が多かった。では、逆テンバガー銘柄の2016年のパフォーマンスはどうだろう。
逆テンバガー銘柄の今は全部年末比ではプラスに
ブロッコリーやアクセルM、エクストリム、gumiなど年初来から一時50%以上下げた銘柄も多いがその後反発し、現在では全6銘柄が前年比プラスだ。今年の日経平均が2月安値まで▲21.9%の下落。5月27日現在が▲11.6%の下落だ。逆テンバガー銘柄の現在のパフォーマンスは日経平均をはるかに上回っている。上述の昨年テンバガー銘柄のFVCが大きく下げているのとは対照的だ。
1.ブロッコリー <2706> /JQ/-47.5%(2016年安値、以下同)/+20.0%(5/27引け、以下同)
2.ビーロット <3452> /東証M/-28.1%/+44.6%
3.アクセルM <3624> /東証M/-64.9%/3.8倍
4.エクストリム <6033> /東証M/-65.3%/+33.7%
5.日ギア <6356> /東証2/-5.4%/+15.1%
6.gumi <3903> /東証1/-57.3%/+27.3%
株価の上下には何かしらの材料や理由がある。ただ10倍になるまで持ち続けていることは相当難しいことは株式投資をやったことがある人ならわかるだろう。
普通は倍にでもなれば嬉しくて売ってしまうものだ。 逆テンバガーは悪材料さえ織り込めが、大きく反発する可能性もある。少なくともテンバガーを当てて、その銘柄を持ち続けるよりは簡単そうだ。悪材料を織り込みきったターンラウンドのチャンスを狙って投資するのも一つの投資方法としては面白いかもしれない。(ZUU online編集部)