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(写真=PIXTA)

J-REIT指数は2015年1月に2,000寸前(1,990)まで上がった後、1,800台で調整していました。2016年2月のマイナス金利導入で再び上昇軌道に入ったかにみえましたが、ここのところ1,900直前で足踏みしています。不動産市場において、価格に「天井がみえてきたのではないか」という感覚が強まってきています。その理由には何があげられるのでしょうか。

リーマン・ショックと同じ? 「今」の状況は

世界経済の現状について、サミットの首脳宣言は「世界的な成長は低成長のリスクの残る中、依然として緩やかで、かつ潜在成長力を下回っている」(外務省訳)としました。低成長リスクとは、日本のことでしょう。政府は、国の借金が1,000兆円に迫る中、2017年4月に予定されていた消費税率の引き上げを、2年半先の2019年10月まで延ばす方針を発表しました。

2008年のリーマン・ショックは、世界に、そして日本経済にも大きなショックを与えました。リーマン・ショックの原因となった需要は、アメリカの住宅バブル崩壊です。これによって日本では円安になり輸出が増える構造になっていたのですが、アメリカの住宅バブルは崩壊して急激な円高を招きました。一方、2016年に入ってからの円高は、別の理由から起こっています。今起きている現象は、新興国から先進国へと資金が戻り始めているもので、その起因は、アメリカの景気回復にあります。

リーマン・ショック前には、投機資金の原油取引への流入によって1バレルあたり150ドル近い高値だったのが、崩壊しました。リーマン・ショック後には大規模な金融緩和が行われ、そのために再び1バレル100ドル以上の価格に戻していましたが、最近になって相当落ち込んでいます。IMFも2016年の原油価格下落を31.6%とみています。今回の下落は、アメリカの成長に伴う利上げが原因となって、資金が原油投機から引き上げられたためと考えられます。

リーマン・ショックの後、世界の先進国は投機を原油や通貨に変えながら金融緩和を続けてきました。現在は、アメリカの金融正常化政策によって、リーマン・ショック後も続いていた不動産バブルが終わりつつある転換点の時期なのです。大きく乱れていたバブルが終わりつつあるということは、世界経済は正常になりつつあるともいえます。

ひとり沈む日本に資金は流れてこない

IMFの世界経済見通しでは、2017年に世界全体では16年(3.2%成長)より少し高めの3.5%成長、アメリカは2.5%、ドイツを含めたユーロ圏は1.6%などと成長率は微増の見通しです。新興国は、16年(4.1%)より高めの4.6%ですが、中国の6.1%に対し、インドは7.5%、アセアン5カ国は5.1%と成長を維持する見通しを発表しています。

一方、日本の2017年成長率はマイナス0.1%と、主要国で唯一マイナス成長が予測されています。これは消費増税を踏まえた推測値で、「増税無し」を織り込んだ次回の見通しで予測を上方修正する余地はありますが、いずれにせよ成長が乏しい国に資金は流れてはきません。

実際、2016年に入って景気の遅行指標である不動産投資にも、取引件数の伸び悩みを指摘する指標が出てきています。中国や、サウジアラビアなど資源国の経済悪化で、チャイナマネーやオイルマネーが流れ込んでこないため、オフィスビル、商業施設など事業用の不動産の取引が伸び悩んでいます。さらに人口減や労働力減で、実需にも先行き不安要因があるのです。

アパートの空室率が首都圏でも上昇しています

実需を反映する住宅をみても、人口がまだ増え続けている首都圏のアパートの空室率は、2015年後半から悪化し続けています。不動産調査会社・タスが5月31日に発表した首都圏のアパートの空室率(2016年3月)は、適正水準とされる30%を超えて東京23区で33.7%でした。これで2015年9月から6ヵ月連続で過去最悪水準を更新しました。千葉県でも34.1%と3ヵ月連続の低下、神奈川県は35.5%です。35%を超える空室率は、同社が2004年に調査をスタートしてから初めてだそうです。

2015年の相続税増税を機に、アパートの建設需要が盛り上がったことで空室率が上昇したとみられます。日本の個人資金は高齢者が支えていますから、さらに先行き不安な要素があるといえるでしょう。低迷を続ける日本経済を背景に、慎重な判断が求められていることは間違いありません。(提供: 不動産投資ジャーナル

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