テレビで流れた「タレントの○○さんロケ中に骨折」のニュース! すぐに病院へ運ばれたとのことに一安心も束の間、気になることがありました。芸能人って保険証を持っているの? そもそも、芸能人には健康保険があるに入っているのでしょうか?

日本は、だれもが安心して医療を受けられることを目的に、「国民皆保険」を導入しています。国民全員が何かしらの公的医療保険制度に加入し、お互いの医療費を支え合っているのです。例えば、病気やケガで治療を受けたとき、医療費のうち一定額が公的医療保険から賄われています。

公的医療保険は、会社員が加入する「健康保険(いわゆる社会保険)」、公務員が加入する「共済組合」、船員が加入する「船員保険」、農業従事者や自営業者、個人事業主などが加入する「国民健康保険(国保)」、75歳以上の人および65歳~74歳で寝たきりの状態や障害を持つ人が対象となる「後期高齢者医療制度」の5つに大別されます。

では、芸能人やプロスポーツ選手が入っているのはどの保険? 今回は、意外と知られていない芸能人が加入する保険についてご紹介しましょう。

芸能人が入るのはどんな保険?

会社に所属しておらず、公務員でも船員でも、高齢者でもないならば、残るは「国保」です。実は国保には、各市町村が保険者となる「国民健康保険」のほかに「国民健康保険組合」があります。

この国民健康保険組合は、国民健康法に基づき、同業同種の従事者を組合員として組織・運営されている保険です。医師、弁護士、土木建設業といった職業別に設立されているもので、芸能関係の仕事をしている人とその家族を対象に設立されたのが、「東京芸能人国民健康保険組合」なのです。

東京芸能人国民健康保険組合設立のきっかけは、昭和の初めにさかのぼります。その頃、病に倒れた芸能仲間の窮状を見かねた女優・山田五十鈴(やまだ・いすず)さんたちが、芸能人のための病院を作りたいと考えました。

芸能人の場合、病気となりそれまでどおり仕事ができなくなると、途端に不安定な生活状態となってしまいます。芸能人にとってそれは切実な問題。山田さんらは歌手、舞踊家、漫談家、映画監督などの仕事仲間と病院の設立を試みましたが、資金などの問題から、残念ながらかないませんでした。

そしてその後、歩合制で芸能活動をする人とその家族が病気やケガをしたときに、安心して医療機関で治療が受けられ、仕事が続けられるような健康保険組合の設立を目指し設立したのが、現在の「東京芸能人国民健康保険組合」です。


「東京芸能人国民健康保険組合」に加入するには

「東京芸能人国民健康保険組合」が設立されたのは1952年。国保などと同様に、芸能関係の仕事をする人々がお互いに助け合うことを目的としています。

加入対象者は世帯単位で、住所が東京都(島しょを除く)、神奈川、千葉、埼玉各県に住民票があり、芸能関係の仕事に従事している人(実演家、制作スタッフ)とその家族。

また、収入が給料制でない(フリーランス)、法人の代表でない、確定申告をしている、市町村の国民健康保険加入者、組合人の推薦人が必要などの加入条件があります。

国保にはないメリット、人間ドッグの補助金がある

この「東京芸能人国民健康保険組合」の加入者が病気やケガで保険医療機関の治療を受けた場合、自己負担割合は国保同様3割です。義務教育就学前の乳幼児と70歳~74歳は2割(例外あり)で、医療費の負担が高額になった場合には、高額療養費制度もあります。

また、出産一時金、葬祭費、入院見舞金、移送費なども支給されます。国保との大きな違いは、人間ドッグ、脳ドッグの受診補助でしょう。年度内1回の補助金が給付されることになっています。芸能関係の仕事は、ある意味体力が資本。忙しくても1年に1度は人間ドッグを受診していただきたいものですね。

メーキャップ・ヘアメイクアーティストも、条件を満たせば「東京芸能人国民健康保険組合」に加入できます。ただし、美容にまつわる人が加入できる「東京美容国民健康保険組合」もあります。

フリーランス、いわゆる個人事業主として仕事をする人の大半は、国保への加入を考えることでしょう。しかし、職種によっては今回紹介したような国民健康保険組合もあります。職種ごとの保険制度を調べ、把握したうえで自分に合った保険を選び加入してください。

今関 倫子
外資系保険会社勤務中にファイナンシャル・プランナー(FP)を目指し、AFP資格取得後、独立系FP事務所に転職。女性を中心に年間のべ200件以上のマネー相談を受ける。独立後は個人相談、執筆、セミナーを中心に活動。「 FP Cafe 」登録FP。

(提供: DAILY ANDS

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