きんゆう女子, 鈴木万梨子, 起業, 金融
きんゆう女子。生まれる(写真=筆者提供)

Webサービス、旅行サービスのTOE THE LINEを起業した鈴木万梨子さんがつづる、働き女子の奮闘記。思い切ってエイチ・アイ・エスを辞め、「お金をどう稼ごうか、ビジネスをしていこうか?」と考えている時に出会ったのがベンチャーの世界、そして金融の世界でした。旅行業のバックグラウンドを持つ鈴木さんが、金融と出会って、気づいたことは…?

会社を辞めて1カ月後にはビジネス立ち上げチームの仲間入り

大企業を辞めて起業するまでの間、大きな転換点となってのはベンチャーとの出会い、として金融の世界との出会いでした。

まずは本当に不思議なことに、会社を辞めてもう1ヶ月後には、ビジネスの立ち上げをしているチームの仲間に入っていました。

友人のFacebookから、近況報告で新しいビジネスをスタートしました!という投稿を見つけすぐに連絡。なぜそんなに興味を持ったのかというと、旅行先でドレスを貸し出すサービスを考えていて、国内のファッションレンタルをスタートしたチームにすごく興味を持ったからです。

「何かヒントがあるかもしれない…!」と、友人に「アメリカにインターンシップに行くまでの間、お手伝いしたい!」と伝えると、すぐに面談となりました。

軽い気持ちで参加したつもりが…

その時は、何か自分が独立する時のヒントになるかも、ほんの軽い気持ちで参加したつもりでした。それも、海外で働く経験をお金で買おうとしている時だったので長くても数ヶ月お手伝いするぐらいの感覚でした。

そのファッションレンタルビジネスは、参画した時には、すでに話題になっていました。TVの取材を受けたり、お客様を実際にご案内したり、投資家に会いに行ったりもしました。事業計画を練るお手伝いをしてみたり、やり始めるとワクワクしてきました。 もっと一緒に働かない?と言ってもらった時には、もう覚悟が決まっていました。

「ベンチャーとして新規事業立ち上る、仕事をしたい」

自分のやりたいこともありながら、新しい働き方を知ってそう直感で思いました。

そんなにうまくは行かなかった

しかし…そんなうまくは行きませんでした。一度は意気込み、チームリーダーとして動く可能性すらあったのですが、なんとチームが突如解散に。いろんなことが原因で、一気に熱が上がったものが弾けてしまい、結局2ヶ月くらいお手伝いをしたのですが、私は行く先を完全に見失ってしまいました。

チーム解散で、ベンチャーに足を入れつつ収益を確保するための仕事、旅ライターと、アパレル企業のアルバイトだけ残りました。 大手企業を辞めてすぐにまた、喪失感を味わいました。自分の中ではもう何してもいいという気持ちにすらなりました。

起業したときの筆者(写真=筆者提供)
起業したときの筆者(写真=筆者提供)

そんな時、ファッションレンタル事業に投資を検討していた、IT会社(アイ・ティ・リアライズ)の社長に「うちの新規位事業の立ち上げをやってみる?」とお誘いをいただきました。

「将来独立したいなら、いずれにしても事業を立ち上げる経験をしてみてはどう?」

その言葉を聞いて、海外インターンシップに行っている場合じゃない、今すぐ仕事力を上げなきゃ!と思い、敢えて難しいと思われる選択をしたのです。いつも選択する時に難しい方を選んでしまう性格のようで、険しい道のりだと挑戦したくなってしまいました。

いきなり金融関係の会社で執行役員に

与えられたポジションは、「執行役員、マーケティング・企画・広報」。そしてそのIT会社の業界は「金融」。

「え、すずまりが、金融IT会社の役員???」。多分、私のことを知る周囲の人からしてみたら、意味不明、一体何が起こったのかと謎だったと思います。まして旅行の仕事で独立したいと言って辞めている人間が、全く馴染みのない金融業界の、ベンチャーで、役員?普通にかんがえたらありえないキャリアチェンジです。業界も、業種も違う転職になるとは、私も驚きました。

「きんゆう女子。」の名刺(写真=筆者提供)
「きんゆう女子。」の名刺(写真=筆者提供)

新しい名刺をもらって自己紹介する時は、むずかゆい、自分の身の丈に合っていないようなそんな不思議な感覚になりました。 オーナー社長がずっと黒字を続けていて、技術を持つ会社だということも知り看板を失っていた自分にとって、また仲間ができたことは嬉しい気持ちでした。

この偶然の出会いが、重なって今の私を作っています。目の前にある小さなチャンスをいいも悪いも判断せずに一つずつ全部、欲張りに拾っていったらこうなったとも表現できるかもしれません。その時は社長も気軽に誘ったのかもしれませんが、私の人生の大きな節目の転職となりました。

事業立ち上げと同時に金融業界での勉強開始

事業立ち上げと同時に金融業界の、勉強が始まります。

……すぐに、めげました。

金融、初心者。一体何から勉強したらよいのでしょう。本を買ってみたり、インターネットで調べてみたり、元上司に株についてレクチャーしてもらったり…。いろんな方法でアプローチしてみますが、もう金融感性のないわたしは、「ワカラン!」とお手上げでした。

でも、一番自分にあった勉強方法が見つかりました。手間がかかるのですが人から、対面で教えてもらうことでした。できれば、少人数で。他力本願と怒られてしまうかもしれませんが、膝を突き合わせて向き合いながら聞くお話は受け止めることができました。そう思ってから、金融(FinTech)イベント・交流会に積極的に参加し始めます。元法人営業ということもあり、すぐに足を伸ばして人に会いに行ってしまいます。

起業が一番の投資(写真=筆者提供)
起業が一番の投資(写真=筆者提供)

立ち上げた金融アプリを多くの人に使ってもらいたいと広報活動の一環でもありましたので、どんどん業界の方々とつながっていきました。

すると、不思議です。今まで遠く感じていた金融業界の方々がとても身近に感じました。そして、気づきました。金融の意識が低いのは、わたしだけではない…。

金融業界の人だって、自分の専門以外はよく知らない

一般OLはもちろん、金融業界にいる方であっても、実は自分の専門分野以外はよく知らないのです。一方で専門家の皆様は、知識も技術もあるのでもはやそういった一般の人の考えは想像できず、むしろなんでそんなにワカラナイ!というのだと、知識格差があると思いました。中には弱みにつけ込むようなサービスもあり、お金に関わる光と影を知りました。

私は、ベンチャー企業の役員として、しかも将来独立したいなんて言っているのに、いい年してそんな金融のことちっともワカラナイだなんて、まずいな…。かわい子ぶれるのももう限界。大人になると、いいか悪いかの判断を自分でして進んでいかないといけないという危機感を感じました。

「きんゆう女子。」誕生の瞬間

金融について少しずつですが勉強しはじめて思ったことは、業界から発信する情報は難しく感じるので、どうも続かないし、苦手意識になり先延ばしにしてしまうということです。この敷居の高さ、難しさ、怪しさ、気持ち悪さ、なんとかならないものだろうか?

金融サービスもいくら技術が高くいいサービスだったとしても、「怖い」とか「怪しい」「難しい」とかの理由で、一般の人が使わないと意味がないのです。私の携わったアプリも、普通のやり方では一般のユーザーに届けることがとても難しいと感じました。 そこで、一般のユーザー自身が自ら金融リテラシーを上げる啓蒙活動「きんゆう女子。」が生まれました。

ワカラナイなりに前向きに

きんゆう女子。と自らワカラナイなりに前向きに勉強をしました!と発言したことで多くの方が教えてくれたり、一緒に勉強しようと励ましてくれたりしました。

今となってはこのコミュニティ活動が、先延ばしにしていた私のプライベートのお金のあれこれを棚卸しする機会になっているし、ビジネスを作る上での基礎から、事業の推進に至るまでの支えになっています。

そして、金融知識を上げることにより漠然とした不安や悩みを解消したり、生まれた余剰分で新しいお金の使い方ができ、アクティブなわたしになっています。

起業を目指す過程で得られたことは計り知れません。起業したことは、わたしは人生で初の、そして最大級の“投資”だと確信しています。

東京都内のシェアオフィスにて(写真=筆者提供)
東京都内のシェアオフィスにて(写真=筆者提供)