社債発行に追い風を吹かせるマイナス金利

ソフトバンクによるARM社の買収発表を受けたロンドン金融市場では、買収が好感され、ARM社の株価が急騰したのにつられ、マーケット全体を押し上げ、通貨ポンドも上昇した。

一方、ソフトバンクグループの株価は、大型買収による財務体質の悪化を懸念した売りが広がり、株価は一時10%以上の値下がりとなった。マーケットからは、買収に絡み厳しい洗練を受けたソフトバンクだが、2017年3月期には、4000億~5000億円規模で、個人向け社債のさらなる発行を計画している。

社債の発行で調達する資金で、過去の社債の償還のほか、低金利が続く環境で、資金需要に備えるとみられる。まるで自転車操業にも見えるが、2016年2月に導入されたマイナス金利政策によって、社債の利払いも抑えられる追い風となる見通しだという。

ARM買収は「アリババ」になるか、「スプリント」になるか

買収した企業が必ずしも、グループの経営に貢献しているわけではない。鳴り物入りで買収したスプリント社の業績がさえず、2016年4-6月期決算では、前年同期比で赤字幅が約15倍の3億200万ドル(約320億円)に膨らんだ。携帯契約者の流出に歯止めがかかる一方で、赤字傾向がまだ続いている。

それでも孫社長がさらなる大型の投資をするのは、自分の嗅覚に自信があるからかもしれない。

実績もそれを物語っていると言えそうだ。かつて中国のEC最大手のアリババに対し、20億円を出資。その後、アリババは米ニューヨーク市場に上場を果たし、時価総額は2300億ドルに達した。結果、30%を超えるアリババの株式に出資していた同社は莫大な利益を上げることに成功した。

投資は長い目で、案件を嗅ぎ分ける孫社長

「アリババ・マジック」ともいえる投資案件に続く、華やかな成功体験を、ソフトバンク、孫社長はまだ成し遂げていない。数多くの投資案件が持ち込まれる同社で、孫社長がアリババに続く、ビジネスの原石をいかに探し出せるか。スプリントの買収効果はこれまでのところ限定的で、さらにARM社買収によるソフトバンクとの相乗効果も未知数だ。

アリババのケースでは、孫社長が出資した2000年からニューヨーク市場に上場して利益をもたらすまで、実に14年の月日がかかっている。直近の大型買収案件も同様に、効果をみて取れるには、まだしばらくの時間を要するのかもしれない。

巨額買収による先行き見通しは必ずしも明るいものではないが、足元のマイナス金利政策下では、ソフトバンクにとって資金調達には絶好の環境ともいえる。2015年12月に発行した個人向け社債では、満期7年・年率2.13%で、3700億円を調達する予定だ。預金での利息が見込めないなか、今後の社債も個人投資家からは人気を集めるのは間違いなさそうだ。(ZUU online編集部)

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