日銀が認めるべきは「緊縮財政による目標阻害」と「金融政策の限界」
日銀が、消費税率引き上げなどの緊縮財政が物価目標達成を阻害してきたこと、そして金融政策だけでデフレから完全脱却することは困難であることを認められるのかが焦点である。
それでも、財政政策の重要性の認識と「2年」で物価目標達成という時間を区切った金融政策運営の見直しがなく、現行の枠組みでの単純な追加金融緩和になってしまった場合、物価目標実現に向けた日銀のコミットメントと政策効果に対するマーケットの信任は、失われてしまうだろう。
政府は、事業規模28.1兆円、そのうち財政措置13.5兆円(財政支出7.5兆円と財政投融資6兆円)の経済対策を閣議決定した。来年度末までに実質GDPを1%程度押し上げると考え、2017年度の実質GDP成長率は1.4%程度と強くなると予測する。
内閣改造と自民党役員人事では、リーマンショック後に大規模な財政拡大で景気底割れを防いだ実績のある麻生財務大臣が留任。国土強靭化などの長期的なインフラ投資に積極的な二階新幹事長が就任するとみられる。
金融政策から財政政策に、デフレ完全脱却への軸足を移すことは正しい方向性であろうし、財政政策の効果を金融政策によって高めるという方法論に変化していくだろう。日銀も、「きわめて緩和的な金融環境を整えていくことは、こうした政府の取り組みと相乗的な効果を発揮するものと考えている」とし、ポリシーミックスの考え方に前向きである。
経済停滞がなければ、極端なヘリコプターマネーも必要なし
もちろん、返済不要な永久国債を日銀が引き受けるなど、極端なヘリコプターマネーの政策が実現することはないだろうし、必要もないだろう。
そして、もし年末まで経済活動の停滞が続くのであれば、経済対策は十分でなかったことになる。例年通り来年1月の通常国会における、更なる景気対策の補正予算で、時間の制約のあった今回の経済対策で具体化が間に合わなかったものを更に、フレキシブルに積み増す必要があろう。そうなった場合には、政府は赤字国債を発行してファイナンスしなければらなず、日銀にも追加金融緩和圧力がかかるだろう。
政府・日銀のしっかりとした政策対応がなされ、アベノミクスが再稼動したという認識が企業とマーケットにも浸透し、総賃金の強い拡大がデフレ完全脱却への動きを再加速させていくことは可能であると考える。
会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト
【編集部のオススメ記事】
・「信用経済」という新たな尺度 あなたの信用力はどれくらい?(PR)
・資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
・会社で「食事」を手間なく、おいしく出す方法(PR)
・年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
・元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)