株価が動く2つの要因 短期と長期で異なる

株価とは、理論的には「その企業が将来的に上げる収益を現在の価値に換算したもの」と定義することができる。株価は、大局的には、その企業の収益の増減に合わせるようにして上下動を形成する。

しかし、株価の長期的な動きは、必ずその企業の収益の増減と一致するわけではなく、収益の増減と反対方向に動くこともある。この際、市場では市場参加者の心理状態が価格形成に大きな影響を及ぼしている。株価とは、理論的な背景による収益の評価の影響を受け、同時に市場参加者の集団心理による評価の影響を受ける。その2つの評価の影響が、価格の動きとして株価チャートに現れている。

株価は、短期的には収益の増減とは無関係の上下動を形成する。これには、上記で確認した市場参加者の集団心理が大きく影響している。「利益が上がりそうだから買いたい」という心理が強くなれば、買い注文が増えて価格が上がる。「損をしそうだから売りたい」という心理が強くなれば、売り注文が増えて価格が下がる。私たちが毎日何気なく確認している株価チャートは、そのようなリアルな背景から形成されている。

テクニカル分析を用いて「適切なタイミング」を選ぶべし

テクニカル分析とは、4本値(始値 高値 安値 終値)を中心として、価格の動きやパターン、価格を加工したテクニカル指標を用いて、過去の価格の動きに一定の傾向のある有利な性質を見出す分析手法だ。

これを用いることにより、価格の上下動の性質や傾向を把握することができ、確率を利用して、安値から上昇を開始するポイントを捉えることが可能になる。テクニカル分析を学び、過去の検証を行うことにより、特に急上昇銘柄を探さずとも、特定の銘柄で安値からの上昇開始のポイントで株式を購入することができるのだ。

このことを理解すると、株式投資で成功するための焦点が、急上昇する銘柄を探すという宝探しの意識から、適切な買いのタイミングを計るという意識に変わり始める。数千銘柄の中から急上昇する銘柄を探す精度に比べると、特定の銘柄を常に観察しておき、上昇するタイミングを見極める精度の方が、遥かに高くなる。

株式投資で成功するために、急上昇する銘柄を探すという意識を、少しだけ頭から離してみよう。そうではなく、特定の観察銘柄の上昇開始のタイミングを探してみよう。この意識の変化は、あなたの株式投資の肩の力を抜き、株価の動きに合わせて柔軟な売買を可能にする。

株式投資で大切な視点は、銘柄を選ぶこともさることながら、タイミングを選ぶことなのだ。あなたが自分の投資スタイルにぴったりと合ったタイミングをつかむことができた時、株式投資は今とは違う次元の利益を生み始める。

松下 誠(まつした まこと)
まこと投資スクール株式会社 代表取締役
2001年2月に株式投資と商品先物投資を開始。1年半で1,500万円の資金を失うも、諦めることなくトレードを学び、厳格な資金管理とトレードルールを作り上げた。直接指導した投資家は3万人以上に及ぶ。松下誠が運営する投資情報サイト「 インベスターズクリニック