賃貸業の年間「経費率目安」は15~20%

購入後初の退去時に、部屋の汚さに驚いてしまい、家賃の約7ヶ月分以上をリフォーム費用に充てた事例がある。入居付けには成功したが、これでは回収に時間がかかる。これは、やや過剰な例だろう。

平均入居期間を5年間(60ヶ月)とすると、3ヶ月分のリフォーム代なら「3か月÷60か月×100=5%」となり、5%相当の経費率であることが分かる。7ヶ月分なら約11.7%と1割を越してしまうのだ。

賃貸業の標準的ビジネスモデルでは年間の経費率の目標が15~20%である。そのうちどこまで修繕費を見込むのか、こういった数字を理解し、経営者意識を持つようにしたい。

一方、リノベーションを目指す場合は、大きく付加価値つけて物件を魅力的にし、家賃の値上げや入居率の向上や売却を狙う作戦となる。コンセプトを明確にし、デザイン性を追求するのだ。

古くなったファミリー物件で、家賃が8万円だったとしよう。入居付けで毎回苦労する位なら、大掛かりなリノベーションで家賃を10万円にアップし、アップ分の全て、120万円(平均入居期間60ヶ月×2万)をリノベ費用に充てても、稼働率が上がる分だけ効果的という判断もできる。それに、家賃アップは出口を考えたときに高値で売却できる要因にもなる。

修繕のコストダウン策

これら費用対効果を学んだとしても、より安く効果的な修繕が出来るならそれにこしたことは無い。安く修繕するポイントも知っておこう。

修繕費用の中では部材原価も重要だが、最大のコスト変動要因は労務費だ。つまり誰に頼むかが重要。安い順に、「自分でやる→分離発注する→一人親方にお願いする→リフォーム会社に直接お願いする→管理会社に一任する」となる。

最近はコスト削減のためにセルフリフォームとしてオーナー自身が作業する事例も多い。剥がしやすい壁紙。傷ついた部分だけを張り替えられるフロアタイルなど様々な商品が揃っている。DIY志向の人にはお勧めである。

修繕を考える前の戦略

修繕して綺麗にするのは当然だが、最後にその前に考えることをお話しする。それは物件の市場性を意識するということ。内装や設備は重要だが、実は客付要素の中の「物件力」を向上する方法でしかないということだ。

オーナーは自分の物件を良くすることしか考えないが、市場には競合があるということを忘れてはいけない。エリア全体の賃貸ニーズの有無、競合物件との差別化が実は最重要なのだ。

もし、現状で十分に差別化できているのであれば過剰なリフォームは不要ということになる。逆に周りに新築が溢れているなら、リノベなど思い切った方策が必要になるのだ。

あれこれと修繕という戦術を考える前に、競合との差別化という基本戦略があることを忘れないようにしよう。

山本 常勝(やまもと つねかつ)
サラリーマン不動産投資家。定年の声が近づく中、自分年金作りを目標に53歳から本格的に不動産の勉強を始め、数多くの不動産を取得して賃貸事業を拡大、2.7億円の資産形成に成功する。登録メンバー1600名を誇る不動産投資サークル「ふどうさんぽ」事務局を務めながら、ファイナンシャル・プランナー(AFP)としても情報発信中。

【編集部のオススメ記事】
「信用経済」という新たな尺度 あなたの信用力はどれくらい?(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
会社で「食事」を手間なく、おいしく出す方法(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)