融資姿勢に取引企業の根強い不満
しかし、取引企業の反応は良くない。金融庁がまとめた「企業ヒアリングとアンケート調査」では、不満の声が相次いで寄せられた。
調査は2015年10月以降に全国約3200社を対象に実施した。経営相談では1200社以上がメインバンクに「全く相談したことがない」と答え、地元企業の支援が十分に進んでいないことが分かった。相談しない理由で最も多かったのは「あまりいいアドバイスや情報を期待できない」。地銀が地元企業から信頼されていない実態も浮き彫りになった。。
中でも厳しい声が集中したのが、地銀の融資に対する姿勢だ。自由意見で地銀の融資姿勢を評価してもらったところ、批判的な声が良い評価をする声の13倍以上に達した。
具体的な回答を見ても、「地銀が自主的に社長と専務の個人保証を外してくれた」など評価する声はごく一部。
◎ 経営状態が最も悪く、本当に融資が必要な時期に助けてもらえなかった
◎ 事業内容より担保や保証ばかりに目が行っている
◎ 地銀側の都合に合わせた融資提案しか聞いてもらえない
◎ 業界の情報に疎く、全く頼りにならない
−−などと地銀に対する恨み節ともいえる声が並んでいる。
地方創生の優等生といわれる岩手県紫波町の紫波中央駅前再開発事業で生まれた公民連携の商業施設オガールプラザや、広島県尾道市のまちおこし事業も最初は、なかなか融資が決済されなかった実態がある。
不良債権処理に追われた時代と変わらぬ体質
金融庁は地銀が地方創生への貢献を通じ、自らも持続可能なビジネスモデルを打ち出すべきとする方針を掲げているが、多くの地銀が企業の事業内容を見ずに担保や保証ばかり気にして、地元企業との間の溝を深めてしまっているようだ。これでは不良債権処理に追われた時代と少しも変わらない。
地方は今、少子高齢化の進行と若者の流出で深刻な人口減少に苦しんでいる。しかし、徐々に進んでいくもので、人口減少が始まったばかりの地方都市にいると、それほど大きな切迫感はない。
このため、地銀の担当者にとってリスクが伴い、手間のかかる事業は後回しになりがちだという。だが地銀が今、地方の新しいビジネスを育てなければ、近い将来そのつけが戻ってくる。金融庁関係者は「金融庁が危機感を持つ理由はそこにある」と指摘する。
持続可能なビジネスが生まれれば、雇用が生まれて地域経済が活性化する。若者の流出にも一定の歯止めがかかるだろう。地方創生は企業と金融の協調なしに進まない。金融庁の新指標導入は地銀に自らの変革を迫っている。
高田泰 政治ジャーナリスト
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関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。
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