ウォール街で伝説的な存在であったトレーダー集団「タートルズ」をご存じだろうか。

タートルズは、全くの素人からプロのトレーダーは育成できるのかという実験によって誕生したトレーダー集団で、メンバーの経歴も警備員やゲーム開発者、弁護士など様々であった。商品トレードで巨万の富を得たプロのトレーダーから短期間のトレーディング研修を受けたのち、素人同然の彼らはプロ顔負けのパフォーマンスを叩きだし、伝説のトレーダー集団と言われるまでに成長する。今回はタートルズ流の投資哲学から相場との向き合い方のエッセンスを3つご紹介しよう。

タートルズ達はトレードを始める前にいくつかのポイントを確認するように徹底的に叩き込まれている。今日でもこれからご紹介するポイントは十分通用するエッセンスだといえるだろう。

ポイント1:市場のボラティリティはどれくらいか?

確認すべき最初のポイントは現在の市場のボラティリティはどれくらいかということだ。ボラティリティを把握する1つ目の理由はリスク管理のためだ。トレーダーにとって資金残高は寿命そのもの。そのため、厳格なリスク管理によって資金を守る必要がある。ボラティリティを把握することで、自分のリスク許容度に見合ったトレードサイズを決定することができる。

自分のトレード1回あたりのリスク許容度が総資金の1%であれば、相場のボラティリティが高まっている時はリスクが1%以内になるようにトレードサイズを落とす必要がある。逆に、ボラティリティが低い時はトレードサイズを増やしてもリスク許容度内におさえることができる。

ボラティリティを把握する2つ目の目的は、利食いの目安としても使えるからだ。たとえば、過去1カ月間のドル円が1日で平均1円程度の値動きをしているとしよう。その日既に90銭程度動いている場合は、それ以上動く可能性は低いと考えられるため、含み益が出ているなら利食いをしてもいい頃合いというように判断できる。このように、ボラティリティはリスク管理や利食いの目安として使え、非常に重要な要素なのだ。

ポイント2:自分のトレードのエッジはどれくらいか?

エッジとは、取引1回当たりの平均利益のことだ。エッジとはつまり、自分のトレードの優位性を数値化したものである。このエッジという概念はトレードをするうえで非常に重要なのでぜひ覚えてほしい。エッジの計算方法は非常に簡単で、以下のとおりである。

エッジ=(勝率×平均利益)-(敗率×平均損失)

FXでたとえてみよう。たとえば勝率60%で平均利益20pips、敗率40%で平均損失15pipsだとする。これを上記の式にあてはめると以下のようになる。

(60%×20pips)-(40%×15pips)=6pips

このケースでのエッジは6pipsとなり、トレード1回あたり6pipsの利益が見込めるということになる。この場合、現在のトレード手法には十分優位性があるといえ、1日平均3回程度トレードするのであれば、月間で400pips近くの利益が見込めるということになる。もし月間利益目標があるのであれば、エッジを計算すれば1日どれくらいトレードすればいいのかの目安も計算できるため非常に便利だ。

もしこのエッジがマイナスであれば、それはただちに自分のトレード手法を改善しなければいけないことを意味する。自分のトレード手法に優位性がないからだ。タートルズ達は常に自分のトレードのエッジを計算するように叩き込まれた。エッジ、すなわち自分の優位性がわからないまま賭けをしてはいけないのだ。