5月27日に財務省が2013年末における対外資産負債残高を発表しました。それによると日本の対外純資産(対外資産から対外債務を差し引いた差額)は前年末に比べて9.7%増え、325兆70億円となり、3年連続の増加、前年に続き、過去最大となり、23年連続で「世界一の債権国」となりました。なお、対外純資産とは日本政府や日本企業、個人投資家が海外に持つ資産から、逆に外国から日本へ投資された差額を言います。円安により海外資産の円換算による評価額が膨らんだことが大きな要因となっています。
第二次安倍内閣が発足するまで、日本では歴史的な円高が数年続いておりました。この時期、日本にとっては海外資産を積極的に購入する良い機会であり、現にそのような動きも見られ、円安になった昨今、これらの投資の評価額が増えたものと考えられます。ちなみにアメリカの純資産額は財務省の資料によると▲482兆112億円です。但し、気を付けなければならないことは、「純資産がプラスだから良い」「純資産がマイナスだから悪い」というものではなく、また「対外純資産額が世界1位だから日本が優秀であるということではない」ということです。純資産額は「(対外資産)-(対外負債)」によって計算されます。日本の内訳をみますと対外資産残高797兆770億円、対外負債は472兆700億円となります。これは「日本は海外へ多くの投資をしているけれども、日本への投資は少ない」ということも意味します。つまり、日本へお金が流れてきていないと言えるわけです。
アメリカがマイナスの数値であるのはこの逆のことが言えます。つまり、海外からアメリカへの投資が多いのです。しかも純額にしてしまうと総額の規模がわからなくなってしまいますが、アメリカの対外投資、対内投資は日本の数倍もの規模があります。外国から国内への投資は統計上マイナスとなってしまうものの、経済の活性化につながります。日本は海外からの資金をうまく集め、国内へ投資をしてもらえる環境を作らない限り、いつまでも税収不足に悩み続けることになり、法人減税が先行する気色が強いため、個人の負担はますます大きくなっていくことになるでしょう。