中長期目標になることで、追加緩和の可能性は低い?

内需の回復と円安の再開などにより、2017年から持ち直すだろうが、年末までに+1%程度の中期的なトレンドまで戻るのが精一杯だろう。

ポジティブに考えれば、2017年は、物価上昇が賃金上昇に遅れることによる、実質賃金の上昇が消費活動を刺激するという、これまでとは逆の展開になっていくと考えられる。2013年以降のアベノミクスの局面では、物価上昇が賃金上昇に先行し、家計が景気回復を実感しにくかったが、ようやく実質賃金の上昇で実感が好転することになろう。

そのような需要の拡大が強くなり、物価上昇を加速させるにはかなりの時間がかかる。

更なる賃金上昇も必要で、2%程度の安定的な物価上昇には2.5%程度まで、失業率が低下する必要があるとみられ、それもかなりの時間がかかる。2017年後半には、日銀がまた2%の物価目標の達成時期を現在の「2017年度中」から、「2018年度中」に先送りすることになるだろう。

しかし、9月の日銀金融政策決定会合で実施する、これまでの金融政策の総括的な検証で、物価目標が「2年」を念頭に、日銀の金融政策のみで早急に達成するものではなく、政府の財政政策とのポリシーミックスで、中長期的に達成するものに変更されることにより、そのような先送りが直接的に、追加金融緩和につながらない形になる可能性がある。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト

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