物価予測
2%の日銀目標の早期達成は困難
これまでの原油価格下落と円高の影響が残るとともに、2014年の実質GDP成長率が消費税率引き上げにより潜在成長率を下回り、2015年と2016年が潜在成長率なみにとどまり、需要超過幅の拡大のペースは、明らかに遅れている。2016の年末までは物価は下落を続けるだろう。2017年は、物価上昇が賃金上昇に遅れることによる、実質賃金の上昇が消費活動を刺激するという、これとは逆の展開になっていくと考えられる。
そのような需要の拡大が、原油価格の持ち直しと円安の再開とともに、2017年からの物価上昇につながると考える。しかし、2%程度の安定的な物価上昇には2.5%程度まで失業率が低下する必要がある。
経済政策
単独緩和からポリシーミックスへ変化
9月に日銀は、金融政策の総括的な検証を行う。単純な追加金融緩和にはならないだろうし、2%の物価目標は政府・日銀で設けたものであり変更できず、引き締め政策と誤解されるような行動も不可能だろう。目標は「2年」という期限を設けたものではなく、中長期的に目指すものとされ、その実現まで金融緩和を継続していくスタンスへ変化するだろう。
目標の早期実現には、財政政策による需要拡大、そして成長戦略と構造改革による企業部門の刺激が重要で、日銀単独の緩和ではなく、政府との協働と時間が必要であることを、確認することになろう。政府は事業規模28兆円程度・財政措置13兆円程度の大規模な経済対策を実施し、これまでの緊縮から緩和に明確に転じており、必要になれば更なる景気対策も実施されるだろう。
企業活動の回復と合わせて、消滅していたネットの資金需要が復活し、それを間接的にマネタイズする金融政策の効果も強くなり、リフレ効果(アベノミクス2.0)が再び強くなるだろう。
会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト
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