新エネルギー車の補助金不正受給問題が起きている中国で、新たな情報が中国財政部より発表された。

同部によると蘇州吉姆西客車製造有限公司ら5社の新能源(新エネルギー)自動車生産企業が、意図的に国家財政から補助金10億元を詐取していた。これら企業はすでに処罰を受けており、その内容も発表された。

新エネルギー車は最優先で登録

中国では、北京、上海、広州、天津、杭州。深センなどの大都市では、自動車の数量制限と大気汚染対策のため、ナンバー登録に制限を加えている。

たとえば上海ではナンバープレートを別途購入しなければならない。毎月のオークションによるしかないが、価格は高騰し、小型自動車が買えるほどになっている。

しかし、新エネルギー車はこの規制の対象ではなく、スムーズに新車登録できるのだ。バスも電気バスへ切り替えるなど、国を挙げ政策を総動員して、新エネルギー車の導入に取り組んでいる。今回の不正行為はそうした動きに乗じたものだ。

各メーカーの不正行為

5社のうち最もひどい不正を行ったのは、蘇州吉姆西客車だった。

同社はニセまたは指定外の原材料を使用していた。生産販売記録や車両合格証も偽造だった。こうした偽の新エネルギー車を2015年に1131両販売していた。せしめた補助金は、2億6156万元だった。財政部は不正発覚とともに同社の補助金受給資格を取り消している。

他の4社の不正は、一部の部品が未完成にも関わらず、完成したものとして補助金申請していたというものだった。4社の受給した補助金は5000万元から5億元までバラバラだが、いずれの社からもその50%を罰金として徴収することにした。また2016年度は新エネルギー車の販売許可を与えない。

健康的な発展過程か

一方で財政部は、わが国は世界で最も早く新エネルギー車普及促進を財政政策に取り入れた、と自賛している。2009年から15年までの間に、中央財政から334億3500万元の補助金が拠出されている。

そうした努力の元、中国の2015年末における新エネルギー車の生産累計は49万7000両に、販売累計は44万両となり、新エネルギー車の保有量は世界最大となった。

334億元のうち不正受給が10億元くらいならば、中国では上々の部類だろう。また表に出てきたこと自体、派閥争いでないとすれば監査機能が健全に作用したことになり、これまた評価できる。軍の不正などは失脚しない限り永遠に表面化しない。

今回の件は、典型悪例をさらすことによって、新しい産業における合法権益を守るのが目的としている。中国の新エネルギー車業界はどこまで進化したのか、研究が待たれるところだ。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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