インド市場への進出を狙うAppleだが、野望の達成にはインド政府が国民情報管理の一環として導入した生体認証プロジェクト、「アドハー(Aadhaar)」への協力が必須条件となりそうだ。

つまりインド政府への個人情報の開示なしには、Appleストアなどの事業展開が困難になると予測されているが、「個人情報を守るのは企業の義務」とし、米政府からの個人情報開示要求を拒否しているAppleだけに、インド進出を断念せざるを得ない可能性がでてきた。

国際IT企業の進出に警戒心を高めるインド政府

ティム・クックCEOが今年上旬に自らインドに出向くなど、中国最大のライバルに成長する可能性を秘めた巨大市場に、並みならぬ関心を示しているApple。

ナレンドラ・モディ首相と直接交渉ももたれた際には色よい返事が得られなかったものの、7月にはいって一度はフラッグシップ店1号店の許可がおりた。しかしここにきて、ようやく動き始めた計画が暗礁に乗りあげたとの報道が出回っている。

米メディアの報じたところでは、インド政府は海外IT企業受けいれの条件として、マイナンバー制度に採用している「アドハー」と、商品の互換性を要求しており、AppleやGoogle、Microsoftといった国際大手との間で、すでに協議の場が設けられたという。

アドハーはマイナンバーとともに指紋あるいは虹彩を登録するシステムで、インド国民の情報を正確かつ効率的に管理する目的で実施されている、世界最大規模のビッグデータ・プロジェクトだ。

米連邦捜査局がアドハーと類似する技術を犯罪者の追及などに利用しているが、インドほど大規模なデジタルデータではない。

AppleやGoogleといった国際大手が、政府とのユーザー情報の共有に応じる可能性は低い。特にハッキングや安全性を重視するAppleに関しては、インド政府の認証ソフトを商品に埋めこむことすら拒絶すると予想されている。

インド政府は自国のテクノロジー発展を目指す一方で、国際IT企業への警戒心を年々強めており、今年2月にはFacebookの無料インターネットサービス「フリー・ベーシス」も、規制改正を理由に撤退を余儀なくされている。

現時点ではサムスンのみがアドハーに対応しているが、Appleがユーザーからの信頼を守り続けるか、あるいは事業拡大の選択肢を選ぶか、今後の行方が非常に気になるところだ。(ZUU online 編集部)

【編集部のオススメ記事】
「信用経済」という新たな尺度 あなたの信用力はどれくらい?(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
会社で「食事」を手間なく、おいしく出す方法(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)