米国で9月16日(金)に発売された米Appleの最新スマートフォンのiPhone 7。スマホジャーナリストやアナリストたちは発表会まで、「旧機種のiPhone 6とさほど違いがなく、そんなに売れないだろう」と期待さえしていなかった。

ところが、フタを開けてみれば、予想以上の機能や性能で評判は上々。米国ではスマホユーザーがニューヨークやサンフランシスコの旗艦店に列を作って発売を待ち、証券取引所ではアップル株が上昇して、投資家まで盛り上がっている。

優良株のアップルが今春に下落し、著名投資家が軒並み同社株を投げ売るなか、そのApple株を大量に仕込み、夏にかけさらに保有量を増やしてきた投資会社バークシャー・ハザウェイを率いるウォーレン・バフェット氏は、今頃ニンマリしているに違いない。

前評判は上々、予約は旧機種の4倍も

実際にiPhone 7を事前に試したスマホ評論家のレビューの効果が大きかった。例えば、米『WIRED』誌は、「iPhoneにワクワクが戻ってきた」と題する記事を掲載。「iPhone 6と代り映えのしない外見が大事なのではなく、何ができるかが大切だ」と論じた。

同記事は、「新型のA10 Fusionプロセッサーは恐ろしく速く、バッテリーの持続時間はとんでもなく長い」と指摘。ソフト面でも「よりシームレスになり、よりサードパーティに開かれ、ほかのアップル製品ともっとよく連動する」とベタ褒めだ。

ストレージ(記録媒体)が32~256GBまで大容量化したこと、ひどく暗い照明のなかでも明るくシャープな画像や動画を撮影することができるところ、そして防水防塵機能も好評だ。さらに、顧客の恨みを買うのではないかと予想されたイヤホンジャックの廃止も、「結局は正しかった」(ニュースサイト『クオーツ』)とする声が多い。

こうしたなか、米携帯電話通信大手4社のうち、TモバイルUSと、日本のソフトバンク傘下のスプリントは、「iPhone 7が前モデルの4倍近い予約を集めている」と発表。AT&Tも、「前年に比べ予約数が多く、予想より素晴らしい」とコメントした。残るベライゾン・コミュニケーションズのみが、「予約は前年と変わらない」としている。

TモバイルUSおよびスプリントで出荷が伸びている理由は、両社においてiPhoneユーザーが比較的少ないためであり、iPhoneユーザーの割合が多いベライゾンでは、乗り換え需要が少ないのだと、アナリストたちは説明している。裏を返せば、「危険な出火スマホ」との不名誉な悪評が定着しつつある韓国サムスン電子の高級Android携帯Galaxy Note 7のつまづきが、iPhone 7を助けている面がある。

カナダのRBCキャピタルマーケッツ証券のアナリストは、「アップルは、スマホとタブレットの二正面で売上を伸ばすだろう」と予想。「アップルは、サムスンに勝ち、シェアを拡大させる」としている。

一方、米大手携帯通信企業での好調な滑り出しを受け、ロングボー・リサーチのアナリスト、ショーン・ハリソン氏はロイター通信に対し、「明るいデータだ。これまでの例では、iPhoneの販売台数はアップルの株価と連動する」と述べた。

アップル株は上昇、バフェット氏の先見の明が際立つ

事実、ハリソン氏のコメントどおり、アップル株は順調に上昇中だ。iPhone 7発売前日の木曜日(米国時間)、同社株は前日終値から3.6%上げて、過去9か月で最高値の111ドル83セントで引けた。これを受け、RBCキャピタルマーケッツ証券は、株価のターゲットを150ドルにまで引き上げている。

さらにソーシャルメディアの声を分析して株価予想を行う米ソーシャル・マーケット・アナリティックスは、過去5日間でアップルが最も株価に勢いのある企業のトップ5に入ったと発表した。

しかしほんの数か月前はまったく逆であった。「米ゴールドマン・サックス証券は、株価のターゲットを136ドルから124ドルに引き下げ」(6月2日)、「米パシフィック・クレスト証券は、アップルの4~6月期における一株当たり収益が前年同期比で25%下落すると予想し、株価ターゲットを123ドルから121ドルに引き下げ」(7月11日)など、まるでクズと言わんばかりの扱かいだったからである。

Appleの売り上げは、引き続き上昇すると見られている。アナリストたちは、米国の最重要な販売時期である11月下旬からクリスマスまでのホリデー・シーズンにiPhone 全体の販売台数が前年同期比6%伸びると予想していたが、今年はホリデー・シーズンが例年より1週間長いこともあり、上方修正の可能性もある。

多くの専門家は、「大半のAppleユーザーは、来年にiPhone 8が発売されるまで、買い控えるだろう」と予測していたが、外れるかもしれない。米国の消費者はiPhone 7に熱狂しているわけではないが、じわじわと人気が高まっているからだ。

ここで改めて思い起こされるのが、「投資の神様」ことウォーレン・バフェット氏の先見の明だ。アップル株が長期間にわたって95ドル前後で低迷を続け、カール・アイカーン、デイビッド・アインホーン、レイ・ダリオ、デビッド・テッパーなど著名な投資家率いるファンドが、軒並みアップル株の全株売却を発表するなかで、バフェット氏だけが逆張りに賭けた。1-3月期にバークシャー・ハザウェイは、981万ものアップル株を10億7000万ドルで取得、その後も保有数を増やしていた。

iPhone 7の成功が確実視される今、「優良株が下落した時に大量購入し、長期保有する」バフェット方式が、また成功をおさめようとしている。CNNは「iPhone 7は、ラッキーナンバーの7だ」と評したが、サムスンにとって7は不吉な数字に、アップルとバフェット氏にとっては、幸運の数字になりそうだ。(在米ジャーナリスト 岩田太郎)

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