自動車,中国
(写真=PIXTA)

中国人は収穫期で気持ちの高揚する秋を昔から「金九銀十」と表現してきた。これは現代にも受け継がれ、夏休みが終わって購買意欲の高まる9月10月、商売繁盛を期待するフレーズとして使われる。自動車業界も売上構成比の低い7~8月が終わり、勝負の「金九銀十」入りした。

2016年8月の売上は、207万1000台、同規模前年比は△24.22%、1~8月までの累計では1675万5000台、同規模前年比は11.43%である。この勢いで“収穫期"を乗り切ることができるだろうか。

民族系はSUVから多元化へ

1~8月の民族系自動車メーカー(自主品牌)の売上は前年比△16.0%と全体の伸びを大きく上回った。この状況を新聞では、依然として“進撃の路を継続"と表現している。しかし秋商戦では、商品内容が多元化する。SUVの影が薄れ、伝統的小型車や電気自動車が勢力を拡大する、としている。

SUVの伸びは、民族系メーカーの伸びをはるかに上回る。8月は△43.9%、1~8月の累計でも△44.7%とすさまじい勢いだ。車種別シェアは30%を超えている。

しかしこのような状態が長続きするはずはなく、売上は早晩下降する。多元化するのは理の当然であり、民族系メーカーは真っ先にSUV偏重から脱却し、品質の向上とともに、従来型小型車や電気自動車に力を入れるべきだ、というのが記事の主張である。

小型車、電気自動車が注目

それにこたえる車が9月に相次いで発売された。

9月12日、スマート似の小型電気自動車「知豆D2S」が発売された。前モデルのバージョンアップ版だが、5万6800元という破格の安さで提供される、民族系小型電気自動車のエースだ。モーターと電池は8年または12万キロ保障、最高速度100キロ、連続走行距離は180キロ、という。“知豆"は2012年より山東省で生産を開始した国策ブランドだ。そのため国家機関、地方政府、国有企業からの購入が見込める強みがある。

また上汽通用五菱は9月8日、2010年に立ち上げた自主品牌“宝駿"ブランドから、宝駿310を発売している。1.2L自然吸気エンジンの小型車だが、これも3万6800元~4万9800元と破格である。それでも中国人がやたらに好む電動サンルーフやクルーズコントロール、バックカメラなども装備できる。最初からフォルクスワーゲンに“迎合した"デザインというのはいただけないが、初めて車を購入する若者層へのアピールは強力だろう、と評されている。

外資系はSUV頼み?

これに対して外資系は相変わらずSUV頼みだというストーリーにしたいらしい。

9月7日鄭州日産東風は、11月発売の1,4L~2.0L級SUV「MX5」の予約販売を開始した。子供2人家庭の増加が予想される中、全長4720mmとし、同クラスの中で最大級の室内空間を確保した。さらに小型のSUV、SX6も近日発売予定だ。

しかしこれは民族系も同様で、国有の北汽集団は新しい小型SUV、BJ20を投入している。価格はリーズナブルだ。

筋書きには多少の無理を感じるが、現在の市場動向の一面には間違いない。秋商戦にはSUV、伝統車、電気自動車とも低価格車が大量投入された。自動車業界の金九銀十は、数量的にはまずまずの結果を得るのではないだろうか。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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