中国で90后(1990年代生まれ)の30%以上が就職して2カ月以内に辞職していたとする調査だ出た。これを新聞では“閃辞”と表現し、詳しい分析を掲載している。調査内容を検討してみよう。

辞職原因と辞職率の高い職種

原因はこのようになっている。

1.給料、福利待遇に不満 30.53%
2. 学力、能力不足    22.57%
3. 残業いや       13.29%
4. 仕事に行きたくない  10.46%
5. 対人関係いや     9.87%
6. 故郷へ返りたい    7.40%

辞職率の高い職種は「清掃業務など裏方業務」 32.50%、「一般工員」 32.43%、「 ニューメディア」 32.35%、「レジキャッシャー」 27.78%、「営業」 27.32%だ。これについては、特に中国的特徴は見いだせない。

一方で、希望する職種は「企業の核心業務」が48%、「正常な段階の業務」 33%、「簡単な業務」は19%となっている。

希望する賃金の最低ライン

希望する賃金はどれくらいだろうか。家賃との比較が掲載されているが、これによると、

1. 家賃の4倍以上    20%
2. 家賃の3倍以上    32%
3. 家賃の2倍以上    48%

となっている。希望が通った人にその原因を問うと「容貌など見映え」 43%、「仕事の能力」 38%、「社交能力」 7%、「その他」 12%となっている。

また就職1年以内だが、転職の意向を持っていると答えた人は67%、持っていないのが33%だった。

ここでは、容貌(見映え)や社交能力(ゴマすり)という回答に、見かけ重視の儒教的傾向が顕著だ。若い世代にも中国的伝統は脈打っていた。

38%が「細かい規則にうんざり」

就職情報会社による“閃辞”現象の調査では、90后の就職後2カ月以内の辞職者は34.2%にのぼっている。離職者の多い業種は、ホテル・飲食、文化・娯楽、医薬、金融、不動産などである。

また情報会社は、2011年の四年制大学卒業生にアンケート調査している。それによると卒業後3年間の平均雇用主数は2である。4つの雇用主の下で働いた者も8%いた。転職しなかったのは38%だった。

反感の強くなる大きな原因は、企業文化と自身の目標との落差、事務所の空気、つまり社風と相いれないことだ、という。アンケートに答えた42%が事務所へ行きたくない、38%が細かい規則にうんざりだ、と答えている。

しかし、これは日本に比べれば大したレベルとは思えない。規則を守るという生活に慣れていない、もっと簡単に言えば、しつけがなっていないことの方が大きい。

識者の見解

国家二級職業指導師、二級人力資源管理師の資格を持つ李女史は、次のように指摘している。卒業生は社会の現実に直面する。大学卒業生は年々増加している。経済も停滞気味である。必然的に矛盾と遭遇し、プレッシャーも大きい。

とはいえ少なくとも半年から1年は転職すべきでない。多くの人が低収入の不満をもらすが、当人の能力は、現在の職にも十分でないことが多い。野心も半ば現実的なものでなければならない。

一族以外に頼るもののない中国人だが、社会の激変により、親世代の経験は、90后に対してほとんど役立たなくなっている。現実に頼りなるアドバイザーは身近にいない。新聞見出しには「個性?それともわががま?」とあるが、世間知らずのまま社会へ出ていくことこそ最大の問題だろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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