8月も終わり、次に休暇を取ろうとするならば目指すはシルバーウィーク。お子さんがいる家庭では、長期休暇は夏休みに……ともなりがちですが、独身やDINKSであれば、混雑する夏休み期間を避けて休暇を取ることも可能です。そして、せっかくの長期休暇なら海外旅行に! と考える方も多いのではないでしょうか?

そのカード、海外旅行保険が付いていませんか?

旅行となれば何が起こるか分かりません。ましてや、海外となればなおさら。楽しい思い出をつくるためにも、海外旅行保険に入っておくことは大切なポイントです。

実は、クレジットカードには海外旅行保険が付帯していることが多いのです。けれども、その補償内容を全く知らないという方も多いのでは? 今回は、クレジットカード付帯の海外旅行保険(以下、カード付帯保険)の内容を中心に、旅行代理店や空港で加入する保険会社の海外旅行保険(以下、海外旅行保険)との違いについても解説します。

よくある困った状況 それに備えた保険が必要

海外旅行で多額の臨時費用が必要になるシチュエーションとは、どんな場面でしょうか?さまざまな状況を想定し、その補償について準備しておく必要があります。

1.「傷害・疾病治療費用」と「救援費用」

海外旅行は日本での生活から離れた非日常空間、楽しい時間の連続です。そんなときに不注意で大きなけがをしたり、合わない食事でおなかを壊したり、思わぬ病気になることも少なくありません。

当然、海外で日本の健康保険証は使えませんので、治療費は全額負担することに。旅行先にもよりますが、日本での自己負担診療とも桁違いの、多額の治療費が請求される場合もあります。

そこで重要なのが、海外旅行保険の「傷害・疾病治療費用」と「救援費用」の補償です。これは、海外の医療機関にかかったときの治療費や、現地での治療後に日本へ帰国するための費用などを補てんしてくれるものです。

傷害・疾病治療費用はカード付帯保険にも付いていますが、注意すべきなのは、海外旅行保険の補償に含まれる「傷害・疾病治療費用」との違い。カード付帯保険では、現地で一旦、全額立て替えて支払う必要がある場合が多いのです。

しかし最近では、「キャッシュレス診療」に対応するクレジットカードも増えてきました。海外で治療を受けた際にかかった費用をカード付帯保険で賄えるというサービスで、治療費を立て替える必要がなく、カード会社のサポートも受けられます。ただし、保険が使えるのはその付帯保険の提携医療機関のみとなりますので、その点は注意してください。また、当然ですが補償限度額内に限られます。

2.「第三者への損害費用」の補償

いざ事故が起きてしまったときに、支払う費用が予想不可能なほど高額になる場合があるのが、第三者への損害が発生したときの賠償です。

例えば、ホテルの備品を壊した、観光の途中で人にぶつかって相手にけがを負わせたなど、危険はいつどこにでも潜んでいます。賠償額の基準が日本とかけ離れて高額となる可能性も考えなければなりません。

国内で「個人賠償責任保険」に加入していても、海外旅行は日常生活とは見なされず、補償の対象となっていないケースがほとんど。賠償責任はカード付帯保険にも含まれていますが、海外旅行保険に比べて限度額が低くなっているのが一般的です。

絶対に落とせない確認ポイントは「補償対象」「限度額」「支払い方法」この3つ!

補償対象

その他、考えられる補償の対象は「傷害死亡・後遺障害」「疾病死亡」「携行品損害」など。そのうち、傷害死亡・後遺障害は日本の生命保険に加入していれば支払われます。ただし、死亡補償についてはそれが主の契約となり、付けないと契約自体が成立しない場合もあるので確認が必要です。また、基本的にカード付帯保険に「疾病死亡」補償は含まれません。

携行品損害は自分の持ち物の損害に対する補償であり、優先順位は低くなります。高額品を旅行に持っていく必要があれば加入するなど、必要か不要かは自分で判断しましょう。

限度額

持っているクレジットカードを確認し、付帯保険の補償対象とそれぞれの補償限度額を把握しておきましょう。カードを複数枚持っているのであれば、それぞれ確認してください。死亡・後遺障害補償は最高額のもの1つが適用されますが、それ以外の補償額は合算されます。

特に重要なのは、「傷害治療費用」「疾病治療費用」についての確認でしょう。この治療費用の補償限度額が意外に低く、1枚のカード付帯保険では賄えなかったという事態も十分考えられます。けれども、付帯保険のあるカードを複数枚合わせることで、補償額もその分増額される仕組みになっているのです。

支払い方法

加えて、①指定医療機関があるか②全額一旦立て替える必要があるか③言葉が通じない地域への旅行なら、現地に日本語対応可能な保険相談対応窓口、または、現地からかけられる日本語対応可能なコールセンターがあるか④ある場合は電話番号――これらも併せて確認しておくことが大切です。

一般的な海外旅行保険との違いは、疾病死亡補償の有無、補償額、治療費立て替え払いの必要性、現地相談対応窓口の有無などです。カード付帯保険の内容を理解したうえで不安を感じたならば、海外旅行保険の加入も視野に入れましょう。

「利用付帯」「自動付帯」って何?「家族特約」はありますか?

最後にもう一つ、カード付帯保険で注意していただきたいのが付帯条件です。「利用付帯」なのか「自動付帯」なのかで、補償の適用条件が大きく違ってきます。

「利用付帯」では、ツアー代金や飛行機など公共交通機関の料金など、旅行費用がそのカードで支払われた場合にのみ保険が適用されます。一方、「自動付帯」では、持っているだけで保険が適用されます。また、家族と一緒に海外旅行に出掛けるのであれば、家族も保障の対象になる「家族特約」がついているかも重要な項目です。

以前、筆者が損害保険会社に勤めていたときに、海外旅行先で急に病気になられたお客様がこう話しておられました。

「まさか現地で病気になるなんて考えもしなかった。言葉は通じないし、医療技術も心配。治療費も幾らかかるのかさっぱり分からない。本当に不安だったし、とても困った。帰国も遅れ、日本に何度電話をしたことか……」

海外旅行に出掛けるなら、保険はかけておいたほうが安心です。カード付帯保険をうまく活用し、必要であれば別途、海外旅行保険に加入して、安心で快適な旅行を楽しんでください。

小野 みゆき
社会保険労務士・CFP・1級DCプランナー。司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険代理店などを経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。 FP Cafe 登録FP。

(提供: DAILY ANDS

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