カラクリは「ふるさと納税」と同じ

このように、そもそも米国は日本に比べて、寄付に対する税制が整っている。つまり、大富豪たちが寄付をするのはそれなりの理由があり、結局は得をしているということになる。

もし、あなたが会社をやっている人ならわかるだろうが、経費の中で税金が占める割合は、決して小さくない。だから寄付することによって節税ができるというのは、彼らにとっては大きなインセンティブなのである。

ここで、「やっぱり金持ちは理に聡い」と感じた人は、日本で行なわれている「ふるさと納税」を思い起こしてみて欲しい。

ふるさと納税に出資している人は、おそらく寄付をしたくてしているわけではない。自分とは縁もゆかりもない地域に、何の理由もなくお金を投じる人などいないし、地方の物品が欲しいだけなら、通販で十分である。

ふるさと納税の利用者も、多くはそれで得られるメリットが目的で出資しているわけだが、それで文句をいう人などいない。出資をすると、自然とその地域に興味がわいて、やがて旅行にいく気になったり、物産展で買うようになるかもしれない。理由はどうあれ、まずは形から入ることが大切なのである。

それでも、寄付には節税以上の意味がある

では、大富豪たちが、ただ単に節税目的だけで多額の寄付をしているのかというと、そうとは限らない。ビル・ゲイツ氏は、数年前のテレビのインタビューで、多額の寄付をすることについて聞かれ、このようなコメントをしたことがある。

「消費には限度があり、本当に自分が価値があると思えるものが何なのかを、考えなくてはいけない」彼らにとって、寄付には節税以上の意味があることを、この言葉が示しているのではないだろうか。

悪いことが起きたときにどう対処するか?

(3)について異論のある人はいないだろう。不慮の事故や災難など、人生には、さまざまな予期せぬできごとが起きるものだ。

人生の起伏について語った例え話に、中国の故事で「塞翁が馬(さいおうがうま)」というのがある。塞翁に悪いことが起こり、近所の人がお悔やみをいうと、それがよい結果をもたらし、それに対して周りがお祝いをいうと、今度はそれが悪いことに転じる、という話である。

この故事の肝とは、塞翁が、悪いことが起きる度に「次はよいことが起きる」と思い、よいことが起きると「次は悪いことが起きるぞ」と心構えをする点にある。この話は一般に、「人生の幸不幸はわからない」という意味で使われるが、それよりは、「ものごとは捉え方が大事」なのだということを、教えているのだと筆者は考えている。

悪いことを事前に回避する方法

世の中で起こっているできごとの多くは、自分ではコントロールできない。よいことと悪いことというのは、まるで振り子のように、振れ幅があるものである。それならいっそ、悪いことがくるのを待たずに、先に「悪いこと」を「よいこと」で相殺してしまおうという手がある。その相殺する方法のひとつが「寄付」であるとする考え方である。

筆者が想像するに、大富豪が多額の寄付をする心理として、2つの意図が働いているのではないかと思う。ひとつは「世間に対するアピール」であり、もうひとつは「自分に対する戒め」である。

人は成功すると、とかく他人の恨みや妬みを買いやすいものである。だが、寄付をすることによって、その分、世間の評価を受けやすくなり、味方も増える。要は「自分は成功しても、これだけ社会に還元している」という、大義名分を手にできるのである。

「成功した後」が肝心

寄付をする2つ目の意図について、なぜこれが自分自身への戒めになるのかというと、寄付とは一種の「痛み」だからである。たとえ大富豪であろうとも、本来なら、自分が苦労して稼いだお金を、他人に差し出したいとは思わないはずである。

大富豪が成功するまでには、人知れぬ苦労があったはずで、そうやって手にした成功を失いたくないからこそ、あえて自ら痛い思いをして、バランスを保とうとしているのではないだろうか。

たとえば日本語にも、「調子に乗る」という言葉があり、これは本来、よい意味で使われる言葉である。ところが、この言葉を他人が自分に対して使ったときには、「図に乗っている」というような意味に変わる。

つまり、自分が波に乗っているときほど、他人からしたらやっかみたくなるような状態だから、気をつけなければいけないという、戒めの言葉だとも解釈できるのである。

まずは、目の前のことから始める

2015年のアメリカ大富豪寄付金ランキングで1位になったウォーレン・バフェット氏は、かつてこのような発言をしたことがある。

「幸運な1%として生まれた者は、残りの99%の人間のことを考える義務がある」

これを聞くと、一般人にはなじみの薄い、スケールが大きい言葉のように聞こえる。やはり、彼らは特別な人間なのだろうか?

筆者が思うに、「99%の人間のことを考えろ」というのは、目の前のひとりの向こう側と世界がつながっているということ。バフェット氏がいいたかったのは、「まずは自分の見えている範囲の人に、喜んでもらえることを考えよう」ということなのだと思う。目の前の人を喜ばせれば、その人が口コミをしてくれたり、その人自身が別の人を喜ばせたりして、波紋のようにその影響が広がっていくからである。

才能は天からので授かり物。才能を授かったこと自体に本人の努力はない。無観客試合で心の充足は満たせないし、世の中は進歩しないからだ。人と人とはどこかでつながっている。だからすべては、目の前のたったひとりの人を満足させることから始まるのである。

俣野成敏(またの なるとし)
1993年、シチズン時計株式会社入社。31歳でメーカー直販在庫処分店を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)や『一流の人はなぜそこまで◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に10万部超のベストセラーに。2012 年に独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、「お金・時間・場所」に自由なサラリーマンの育成にも力を注ぐ。

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