相続税,評価額,計算
(写真=PIXTA)

相続を考えるときは、それぞれの相続資産がいくらで計算されるのかを把握することは大切だ。この資産が算出される額を、「相続資産の評価額」という。実際に相続が発生した際には現預金だけではなく、土地や不動産など様々な資産の評価額を算出し、相続人間で按分していく。なお資産によって評価額を算出する計算式は異なる。今回は、資産ごとに評価額の算出方法を確認し、節税手段を考えていきたい。

目次

  1. 相続税の評価資産とは
  2. 相続税評価額の算出方法
    1. 土地の相続税評価額
    2. 宅地の相続税評価額
    3. 小規模宅地の特例の条件
    4. 自社株式の相続税評価額
  3. 注意すべき点は?

相続税の評価資産とは

相続において代表的な資産は3つ。まずは「土地」だ。先祖代々受け継がれる土地だけではない。居住用住宅を購入したとき、その建物の建つ土地も相続の対象になる。相続資産においては、土地のうち住宅用の土地のことを「宅地」と呼び、通常とは異なる評価額計算を定めている。つまり土地が相続資産となった場合は、その土地が宅地なのか、宅地ではないのかを確認する必要がある。

相続税評価額の算出方法

土地の相続税評価額

土地の評価額は、2種類の計算方法がある。主に市街地の土地を評価する、路線価にもとづいて算出する「路線価方式」。路線価がない土地に関して、固定資産税評価額に地域ごとに定められた倍率を乗じて算出する「倍率方式」だ。

路線価方式

日本中の土地に接している主だった道路には「路線価」という価格がつけられている。この価格は市役所などの自治体で確認することができ、土地の相続評価額の算出はまず、該当地の路線価を確認するところから始まる。

路線価(千円/㎡)※毎年改定×面積(㎡)×補正率=評価額

基本的には路線価に該当地の面積を掛けるのだが、角地や二方道路、三方道路、不整形地などはそこに補正率を更に掛けて、評価額を算出する手続きが必要だ。

倍率方式

一方、路線価の設定されていない道路については、固定資産評価額が基本となる。
固定資産評価額(3年に1度)×国税局長が地域毎に定める倍率(毎年改定)=評価額

宅地の相続税評価額

居住用の土地、いわゆる宅地に関しては路線価方式と倍率方式を使用するものの、さまざまな軽減措置が用意されている。代表的なものが「小規模宅地の特例」だ。

小規模宅地の特例は、死亡した人(被相続人)や生活を共にする家族(同一生計親族)の事業用や居住用の宅地について、一定の要件を満たした場合に評価額を80%減額できる制度だ。小規模宅地の特例を適用するための条件は、以下の通り。

小規模宅地の特例の条件

適用土地の用途 被相続人や同一生計親族の事業用もしくは居住用。保養を目的とする別荘や、生計を一にしない親族が利用している宅地は適用外。
相続によって宅地所有した人は基本的に「宅地の継続使用」が必要。居住や事業使用が対象。ただし被相続人の配偶者が相続する場合は、継続使用は不問。
面積 居住用宅地は330㎡まで。事業用宅地は400㎡まで。

対象の土地が面積要件に達しない場合は土地のすべての面積が、上限を超える場合は上限面積までの部分が対象となる。

自社株式の相続税評価額

相続資産は土地だけではない。被相続人が中小企業のオーナーだった場合など、株式を承継するケースがある。このように経営者が有していた自社の株式を「自社株式」といい、やはり独自の計算方法が定められている。

株式が上場していた場合は、取引所の株価という客観的な数字で見ることが可能だが、原則的評価方式として「類似業種比準価額方式」と「純資産価額方式」で算出する。主に大会社が使用する類似業種比準価額方式は事業内容の類似した会社の株価に比準して株価を算定する方法。中小会社が使用する純資産価額方式は、自社株を会社財産に対する持分と考え、会社の純資産にもとづいて株式の評価額を算定する方法だ。

この両者を併用する方式、加え例外的評価方式として「配当還元方式」がある。同族株主以外の株主は会社に対する支配力はないため、株主の権限である配当額にもとづいて評価する方法だ。どの方法を使うかは、税務署や専門家の見解を加えながら判断することが大切だ。

注意すべき点は?

これら評価方法をもとに、最も節税効果の高い資産を有することで、「評価方法を活用した節税」を行うことができる。相続を見越した不動産購入や、承継をもとにした自社株の承継が活発に行われるのはこのためだ。

これら評価方法を活用した節税方法で、注意すべきは「専門家をうまく活用すること」だ。税理士などの専門家はお金もかかるため、インターネットなどの情報をもとに自身で節税策を練りたくもなるが、誤った節税策は税務署に追徴課税からの追徴課税など事後処理に追われるような事態も起こり得る。実績のある専門家に依頼し、短期間で「片づけてしまう」スタンスが大切だ。

以上、相続税の課税に対して、各資産の評価方法をお伝えした。大事な資産を、そのままの価値で次の世代に残すのはとても大切な考え方だ。専門家を活用しながら、賢い節税手段を進めて頂ければと思う。

工藤 崇 FP事務所MYS(マイス)代表
1982年北海道生まれ。北海学園大学法学部卒業後上京し、資格試験予備校、不動産会社、建築会社を経てFP事務所MYS(マイス)設立、代表に就任。WEBコラムを中心とした執筆活動、個人コンサルを幅広く手掛ける。ファイナンシャルプランナー(AFP)。