◯不調の原因② 不動産業界が大富豪のチャンピオンから転落〜新しいチャンピオンは製造業界へ〜
2012年は長者番付内の変化が激しい一年でしたが、中国での長者番付では不動産業が依然として主要な地位を占めています。
フォーブスの中国人長者番付のうち、計43人のビリオネアが10年間に渡り入選していますが、このうち21人は不動産業界の長者です。不動産業は過去10年間で、最も富を創出した業界です。
しかし、中国政府の不動産抑制策を受け、長者番付における不動産業の地位が低下を始めています。
中国でフォーブスとは別に主要な富裕層ランキングの一つである胡潤長者番付では、上位50名の不動産長者の資産総額は前年より5.2%、5年前より17.4%減少しています。またそればかりではなく、ランキング内で不動産業界の方が占める比率は2002年の50%に対して、2012は19.8%まで下落しています。
また大変注目をするべき変化としては、この胡潤長者番付において不動産業界の長者数が2012年に初めて追い抜かれ、製造業の長者数が1位となったことがあげられます。同番付によると、製造業の長者数が全体の20.5%を占め、不動産業界が19.8%で2位となりました。
他に投資や金融関連、資源開発、医薬品業界の方がランキングを占める比率も高かまっています。
◯不調の原因③ 新エネルギー産業のかげり
不動産業界が"安定的"な低迷をしているのに比べ、新エネルギー業界は激しい浮き沈みを経験しています。
特に太陽エネルギー、風力エネルギーなどの産業が深刻な影響を受けました。
フォーブスが2012年に発表した中国人長者番付において、向日葵の呉建龍氏や拓日新能の陳五奎氏などの、中国新エネルギー業界の代表人物がランキングから抜け落ちてしまっています。
胡潤長者番付でも、太陽エネルギー産業が「被災地」となり、呉建龍氏の資産が69%減、倪開禄氏と倪娜氏(親子)の資産も59%減となりました。
業界関係者は、「中国太陽エネルギー産業は、過去数年間は産業のスターとして、数え切れないほどの富の神話を創造してきた。しかし周期的な要因、盲目的な生産能力の拡大、高い海外依存度、欧米との貿易摩擦の悪化により、かつての輝きが失われた」と指摘しています。
なお中国政府はこのことに対して強い危機感を持っており、新エネルギー産業に対する支援策を、相次いで発表しています。
新華社北京12月20日
中国商務部、太陽エネルギー産業支援政策を策定中
中国商務部の沈丹陽報道官は18日、「昨年より、世界金融危機および貿易保護主義による影響を受け、中国太陽エネルギー産業の景気低迷や赤字といった現象が生じ、産業の発展が苦しい時期を迎えている。商務部は自らの職責に基づき、国家が策定中の同産業の発展支援政策に積極的に参与する」と表明した。19日付中国証券報が伝えた。
◯メディアなど、非製造業やサービス業なども躍進
ランキングから読み取れる変化として、メディアや映像関連産業などの非製造業のサイービス業の躍進もあげられます。
2012年の中国500強企業のうち、272社が製造業関連の企業とり、その売上高は500強のうち43%を占めました。しかし利益においては25%のみとなっており、残りの75%は非製造業関連の分野がしめています。
2012年は、王健林氏の率いる大連万達集団による、世界2位の映画館チェーン・米AMCシアターズの買収など、象徴的な出来事もありました。
フォーブス上海分社の範魯賢社長は、「これは中国の過去10年間の経済・社会の大発展が、すでに文化繁栄の段階に入ったことを示す。莫言氏のノーベル文学賞受賞もまた、このすう勢を示している。文化産業は将来的に、中国資本市場の新たな注目点となる」と語っています。
以上、多少の参考情報も交えつつ、中国でのビリオネアや大富豪に関する記事のまとめをお送りしました。
株式相場などの不調により、ビリオネアや大富豪全体としてはその人数や資産を減らしています。しかし同時に、不動産に変わっての製造業の躍進や、さらにその先のメディア産業などの成長など、興味深い要素も散見されました。
21世紀の日本にとって非常に重要なパートナーとなる中国の大富豪やビリオネア、及び金融サービスなどに関わる情報は、今後も適時お届けしたいと思います。
BY TOMB