就職希望学生の、北京、上海、広州、深セン離れが明確になったとするデータが発表された。2016年の大学卒業生の36%が、北京、上海、広州、深センの4大都市での就職を希望していた。国土の広さからするとこれでも集中しすぎのように思うが、3年前は、何と51%の大学卒業生がこれら4大都市での就業を望んでいた。3年間で15ポイントもダウンしている。
また希望する給与水準も前年より下がった。経済減速により、夢を追うことを諦め、現実路線にシフトしているのだろうか。
景気ははっきり下降
ネット求職サイトBoss直聘は、最新の就職状況を分析した報告を発表した。これは80万人を超える求職学生の就職活動を分析したデータである。
それによると、経済形勢が若者の職業選択に深刻な影響を与えている。国家統計局の発表とは違い、ここでは経済ははっきり下降、と言い切っている。
2016年、就職希望者の希望月例賃金は4421元、これは前年より5.6%下降した。IT、ネット関連、金融などを希望する者の希望賃金額は上昇しているが、機械製造、エネルギー関連など従来型伝統産業では下降した。
巨大都市での就業希望者減少を受け、二線級都市を希望する者が前年比8%増えた。これらの比率は44%となり4つの巨大都市を逆転している。杭州、蘇州、青島、成都、南京などがその代表格で、“新一線都市”として優れた人材を吸引するようになった。巨大都市へ行けば何とかなる、という時代ではなくなっている。中国人の現実的性格がよく見てとれる。
人気のBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)
ネット関連有名企業の人気は高い。彼らが一番採用に力を入れている領域は、電子ビジネス、ネット金融、020(Online to Ofline)の3つである。当然多くの優秀な学生を引き付けている。
しかしこの分野で採用されるには、技術的スキルはもとより、マーケットに対するアピール力や、業務運営の高い習熟度も必要で、並大抵のことではない。これらを兼ね備えていたとしても、やはり就職活動は挑戦であり続ける。
特に業界のシンボルであるBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)の3社は高い壁としてそびえている。依然として強大な力を持ち、優秀な大学卒業生を引き付けずにはおかない。しかしここへ来て新たな“潮流”も見えて来た。
新進企業、人材吸引力で上回る
現在そのBAT以上に人気上昇中なのは、投資銀行業の「独角曽」、支付宝を扱う「ANT FINANCIAL(アント・フィナンシャル)」、ポータルサイトの「今日頭条」、ネット辞書の「知乎」などの未上場新進企業である。これらの人材吸引力は、今やBATを超える勢いだ。
内容の不明な“就職希望学生吸引力指数”という指数がある。アント・フィナンシャルはこの指数の増加率が37.4%もあり、同社は2016年の就職戦線において、「最も競争激烈にして最高のネット関連企業」と評された。
また今日頭条も、人工知能を駆使した伝統的情報処理モデルの革新で評価が高く、同指数で第3位につけている。
これらの企業は人材の獲得には、金に糸目はつけないという。ただし採用されるのは、重点大学の学生が70%以上、しかも大学院卒が半数に近くなっている。やはりこうした「黄金の家」の住人となるのは、簡単ではない。
優秀な学生の就職希望は「北上広深」「BAT」から新一線都市、新進企業へと拡がりを見せている。しかし中国では優秀な人材は、どの会社に職を得ても、金融技術の開発に当たることに変わりなさそうである。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)
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