進行性乳がんの闘病生活をブログでつづり話題となっているフリーアナウンサー・小林麻央さん。また、元女子プロレスラーでタレントの北斗晶さんも、2015年に乳がんで右乳房の全摘出手術を受けるなど、がんと闘う女性タレントさんの報道を耳にすることも多くなっています。がんは、早期発見はもちろんですが、高額な医療費や長期にわたる治療のことを考えると、もしもの備えをしておくことも重要です。

「もしもの備え」といえば保険。最近は、「無料相談」ができるというキャッチコピーで広告を打ち出している来店型保険代理店が増えてきましたが、無料でいいとはどのような仕組みなのでしょうか。保険代理店勤務経験を持ち、現在ファイナンシャル・プランナーとして活動している筆者が、来店型保険代理店の気になる仕組みについて解説します。

保険料の仕組みはどうなっているの?

保険会社の収入である保険料はどのように決まるのでしょうか? 簡単に言うと、次の3つの予定率を基に計算されています。

①予定死亡率

過去の統計を基に、性別・年齢別の死亡者数(生存者数)を予測し、将来の保険金などの支払いに充てるための必要額を算出します。この算出に用いられる死亡率を「予定死亡率」といいます。

②予定利率

生命保険会社は資産運用による一定の収益をあらかじめ見込んで、その分だけ保険料を割り引きます。その割引率が「予定利率」です。

③予定事業費率

生命保険会社は契約の締結、保険料の収納、契約の維持管理などの事業運営に必要な諸経費をあらかじめ見込んでいます。これを「予定事業費率」といいます。

保険会社が無料相談をサービスできるワケ

最近、「無料相談」を全面に出した来店型保険代理店のCMをよく見かけます。けれども、「タダより怖いものはない」の言葉もあるように、「無料」とあるほど身構えてしまうなんてことはありませんか?

なかには、無料相談するだけで商品券がもらえるとうたう保険代理店もあります。確かに、保険について考えるモチベーションにはなるかもしれませんが、その財源は一体どこにあるのか、どのような仕組みで成り立っているのかは気になるところでしょう。

保険会社の収入のうち、まず保険会社の人件費や代理店への「代理店手数料」は、先ほど説明した「予定事業費率」として見込まれる費用に含まれています。

「代理店手数料」は保険代理店の収入の根幹となるものです。「代理店手数料」は保険会社、保険商品によって違いがあります。代理店は販売実績でランク付けされており、代理店によって計算の元となる料率が違うためです。全国展開されている保険代理店は規模も大きいため、販売実績においても保険会社が認める高い料率が設定されています。

実際に、無料相談を受けるだけで商品券がもらえるなんて「いい」話があれば、相談ぐらいしてもいいかな……と思ってしまうところですが、実は対象となる相談者にも条件があるのです。相談が最後まで行われること、つまり、保険契約の「見込み客」であることが基本的な条件になります。

筆者のような保険の仕事をしている人は、見込み客と見なされず条件から外れるでしょう。そして、健康状態(体況)に不安があるなど、そもそも保険加入が難しい人も対象外になるなど、条件はさまざまです。無料相談を希望するなら、保険代理店のホームページで条件を確認しておくことをおすすめします。


保険業法改正によって何が変わったか

2016年5月29日、保険業法が改正されました。

来店型代理店には、生命保険会社と損害保険会社を合わせて40社近くの保険会社の商品を扱っている店舗があります。そのような保険代理店は、どのように最適な保険商品をおすすめしているのでしょう?

相談者の多くは保険に関して詳しくない状態で来店するため、保険会社や保険商品の希望口にすることはあまりないでしょう。まず、代理店でお客様に最適な保険商品を選定することになります。このとき、保険代理店または保険会社が、相談者に自社の収入に有利な商品を選定・推奨することを防げるよう法整備したのが「改正保険業法」です。

代理店は法律や条例はもちろんのこと、社内規程・企業倫理・社会貢献の遵守――これを「コンプライアンス」といいます――を徹底することが求められているのです。そして、保険契約を検討している消費者も、保険についてアンテナを張り、情報を収集することもとても大切なことです。

来店型代理店を賢く活用するには

来店型保険代理店には、保険だけでなく、相続や税金などの分野にも詳しいファイナンシャル・プランナーの資格を持ったスペシャリストが多く在籍しています。つまり、保険だけでなく、多方面から適格なアドバイスを受けることができるのです。

「無料相談」で保険代理店が必要とする情報は、生年月日のほか、健康状態などの慎重に扱うべきセンシティブ情報、そして「保険商品を必要とする理由」です。保険に対する思いは必ずしっかりと伝えましょう。相性のよい担当者に出会えることを、そして、最終的に保険が頼もしい後ろ盾となってくれることを願っています。

きだ はるか
保険の乗合代理店にて損害保険の個人分野を12年経験。現在、法人向け生命保険分野に従事し、大学でモチベーションマネジメントを勉強中。1972年埼玉県生まれ。ファイナンシャル・プランナー(AFP)。

(提供: DAILY ANDS

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