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(写真=PIXTA)

北京で開催された「新浪新聞未来メディア会議」で、ネットニュース従事者の特性や、職業理念、技能、競争、生活状況などをまとめた「2016ネットニュース従業者生態報告」が発表された。

新浪とは、ミニブログ“新浪微博”から発展した最有力ネット企業の1つで、今では“新浪新聞”を始め、多くの有名サイトを運営している。米ナスダック市場に上場、NBAと提携関係を結ぶなど、国際的なパフォーマンスも派手である。中国最先端企業の1つだろう。その新浪の従業員を始めとするネットニュース従事者たちは、何を考え、どんな暮らしをしているのだろうか。

高学歴、低報酬

ネットニュース従事者たちはインテリで、教育程度は非常に高い。大卒は94.1%で、そのうちの24.5%が修士以上の学歴を持つ。さらに41.6%は既存メディア、つまり新聞、テレビなどの出身である。一方で50%以上は全くネットやマスコミとは無関係な出自を持つ。この人たちの志望動機は、ネットやニューメディアへの“熱愛”である。

実際の労働環境はどうだろう。統計によると従業者の比率は、男性44.1%、女性55.9%と女性上位になっている。平均年齢は28.3歳、大部分30歳までの世代である。平均残業日数は、1週間当たり5.1日、1日当たり平均労働時間8.5時間。労働強度はきつく、昇進機会、報酬とも大いに不満という。労働時間に関しては「電通」などにくらべずっと少ないように思うのだが--。

大多数の従事者たちは自らを「中流の下」と位置付けている。そして従事者の12%はあまり幸福ではない、と答えている。理由は、家が買えない、家族と過ごす時間がない、職業の未来が心配などである。51%が賃貸に住み、持ち家は17.5%だった。

職業意識

次に職業意識を見てみよう。ネットニュースの役割は以下の3点という。

1 発生した事件の事実報道である。社会変動の事実を提供すること。
2 迅速に情報を大衆に提供すること。
3 複雑な問題に対し、分析と解釈を与えること。

ところが報道スピードはどんどん早くなっているものの、3に関しては依然として課題のまま、ほとんど進化していない。大きな課題として残っている。

またネットニュース従事者に「理想のメディアは?」とアンケートしたところ、面白い結果が出た。従来メディアの代表、英国BBCとニューヨークタイムスが人気2トップだったのである。中国本土媒体では、かつて政府に激しく抵抗した「南方週末」の評価が高かった。しかし最近の同紙はかつての精彩を失ったと見られている。権威と反骨、どちらもあるべき姿なのだろうか。このあたりの考え方は古典的西欧志向のように見える。

職業技能と社員の忠誠度

彼らに必要な技能とは何だろうか。レポートでは未来について検討を加えている。

米国コロンビア大学の手による「脱工業化社会の新聞業(2012年)」という報告がある。そこでは未来のメディア従事者に必要な技能を挙げている。以前なら必要とされなかった創業起業家精神や、ネット上の個人主体の確立まで謳われている。さらに今はSNSを通じて公衆と真摯に向き合う必要もある。もはや大学の新聞学科で学ぶような内容ではなくなっている。

ネットニュース従事者は、新時代にどう向き合うべきか。人工知能、HTML言語、VR、ドローン、などの重要性をどう把握しておくべきか。さらに新技術をどう可視化して説明するのかも課題だ。必要技能の範囲を定めることは不可能に近い。とにかく要求水準は高く、レポートを見る限り、第一線に立ち続けるのは大変そうだ。

最後に自己の職業に対する忠誠度を見てみよう。この業界は1~5年までの在籍者が37.9%を占める。そのうち就職して失敗だったと思っている人は37.3%、退職を考えている人は15%である。

日本の同業者の実態と是非比べてみたいところである。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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