あなたは「資格業界のカモ」にされていないか?
もともと、不景気になると活況を呈する業界のひとつが「資格取得」に関する業界である。それはたとえば教材の製作・販売や通信講座、セミナー教育ビジネスなど、資格を取得するための環境を提供している一連の業界のことを指す。
彼らの活況ぶりは、インターネットを検索すればすぐにわかる。「人気資格ベスト○○」といった広告をあちこちで見かけるし、本屋へいけば、どんなに小さな店舗であろうと、必ず「資格取得コーナー」というのが設けられている。他にも、電車のつり革広告や街中にある看板など、日々、何かしらの資格取得にまつわる広告を「目にしない日はない」といった具合である。
いわずと知れたことだろうが、これだけ多くの宣伝広告を打っているということは、提供者は、それだけの需要を見込んでいるからに他ならない。ゴールドラッシュで活況を呈するアメリカで、リーバイスが採掘作業者向けにジーンズを売りまくったように。
我々は、「どの資格を取ることが、自分にとって有利になるか?」ということよりも、本来は「なぜこれだけのものを毎日、見せられているのか?」ということの方に、もっと注意を払うべきなのだ。
「成功している業界から学ぶ」のもひとつの方法
そもそも資格とは、基本的には受験し合格すれば、誰にでも与えられるものである。確かに、中には「数年程度の実務経験」を必要とするなど、ある程度の条件を設けているものもあるにはあるが、結局のところ、資格とは規則を覚えることに過ぎない。
つまり、多くの人は、他人との差別化を図ろうとして、資格を取得しているのに、実際にはただ、同じ資格を持つライバルの群れの中に、自ら入っていっているに等しいのである。資格になった時点で成熟市場と言っても過言ではない状況にある。
依然、経済は厳しい状況だが、どのような環境においても、稼いでいる人・業界というのは必ず存在する。目的が稼ぐことなら、資格取得の勉強法よりも先に、ビジネスマンとして稼ぎ方を学ぶ方が有益ではないだろうか。どの資格の世界にも猛者はいる。羊の群れに飛び込む狼のような存在である。
資格取得は自分への「投資」の概念で
筆者は、資格取得が悪いとは、必ずしも思っていない。ただ、取る前に、本当にその資格が必要なのかどうかを、ぜひ自問してみて欲しい。
資格を取得するには、自分の貴重なお金と時間を使うことになる。そうした貴重な資源を投じる以上は、「どれくらい費用対効果が見込めるのか?」「何年くらいで投じた以上のリターンを回収できるのか?」と思案することが大切である。
そのためには、資格取得時間をインターネットなどで検索し、自分の今の生活の中で、どれくらいの勉強時間を確保できるのか、資格取得までにどれくらいの期間とお金がかかりそうなのかを、まずは見積もること。「資格名称 勉強時間」と複合検索をすれば投ずべき時間数は一目瞭然だ。間違っても、資格取得自体が目的にならないようにしたい。
時間とお金を投じるということは、ビジネスの発想そのものだ。有資格者しかできない仕事で世の中に貢献したいなら、有資格者を雇うという手だってある。その資格がなければできないビジネスなら、会社側が奨励しているはずである。それ以外の資格は、自分への「投資」という概念を忘れないでほしい。
俣野成敏(またの なるとし)
1993年、シチズン時計株式会社入社。31歳でメーカー直販在庫処分店を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)や『一流の人はなぜそこまで◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に10万部超のベストセラーに。2012 年に独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、「お金・時間・場所」に自由なサラリーマンの育成にも力を注ぐ。
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