ROE
(写真=PIXTA)

近年、ROE (自己資本利益率) と呼ばれる指標への関心が高まっている。このROEは、企業の収益力や株主価値への貢献度合いを測る代表的な指標だ。

関心の高まりの背景には、2014年にJPX日経インデックス400が創設されたこと、大手議決権行使助言業者が議決権行使助言方針にROE基準を導入したことなどの影響が考えられる。

JPX日経インデックス400は、「投資者にとって投資魅力の高い会社 (日本取引所グループ) 」で構成される指数だ。具体的な選定基準として、「3年平均ROE、3年累積営業利益、選定基準日時点における時価総額等」があり (定量的な指標によるスコアリング) 、ROEが高い企業が採用される可能性が高いといえ、上場企業各社がROEを高める努力を促されているといってもよいだろう。銘柄選定及び銘柄入替方法については、日本取引所グループの HP に掲載されているためそちらで確認することができる。

それでは、ROEとは具体的にどのようなものなのかを見ていこう。

企業の収益性に注目した投資指標

ROEとは、自己資本に対する純利益の割合で、1年間の企業活動を通じて、株主の投資額に対していかに効率的に利益をあげたかを示している。一般的に、高いほうが経営が効率的であり望ましいといえる。具体的には以下の計算式で求めることができる。

◯ ROE (株主資本利益率)
= 1株当たり利益 (EPS) /1株当たり純資産 (BPS) × 100
(あるいは)
= 当期純利益/株主資本

※ EPS = 純利益/発行済み株式数
※ BPS = 純資産/発行済み株式数

ROEの1つの基準に「8%」がある。これは、2014年8月に経済産業省が取り組む「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクトの最終報告書における、企業がグローバル投資家から認められるための最低基準として提唱されたものだ。すなわち、ROEが8%を超える水準であれば、グローバル投資家からも魅力ある企業として映る一つの基準となりうることを意味している。

最近では、ROEを高めることを一つの目標とする企業も増加してきているが、まだまだ高いROEを達成しているとは言い難い側面もある。日本企業ではROEが10%未満の企業が多いが、米国では10~20%台に広く分布している。そのため、さらなるROE向上が日本では望まれているともいえる。実際に安倍政権では日本再興戦略をもとに、企業の収益性改善やガバナンス強化を推し進めている。

ROEは3つの指標に区分される

ただし、ROEはただ単に高ければ良いというわけでもない。ROEは上述した式をさらに3つの指標に分解して表すことができる。3つの指標に分解することで、その企業のROEの水準が、どのような要素によりもたらされているのかを知ることが出来るのである。

その際に使用するのが「デュポンの式」と呼ばれるもので、以下の計算式で表すことができる。

◯ROE (当期純利益/株主資本)
= 売上高当期純利益率 × 総資本回転率 × 財務レバレッジ × 100
= (当期純利益/売上高) × (売上高/総資産) × (総資産/株主資本) × 100

①売上高当期純利益率は企業の収益性、② 総資本回転率は資本の効率性、③財務レバレッジは自己資本比率の逆数であり、財務の安定性を見る指標である。

そして、①〜③のそれぞれの指標を伸ばすためには、①利益率の向上、②売上を伸ばす、もしくは総資産を減らす、③負債による資金調達を増やすことによる財務レバレッジの増加、このいずれかを行うことでROEが高まることがわかる。すなわち、数字の操作ができる側面がある点が要注意といえるのだ。また、このデュポン分解をする上での注意点として、業種によって各要素の数字は異なるため、同じ業種に属する企業間での比較でなければあまり意味をなさない。

「良い・悪い」を見極めるには

例えば、企業が借り入れを行い、その資金で自社株買いを行ったとしよう。一般的に、自社株買いは株式市場で自社株式を購入し、その株式を償却する行為である。そして、自己資本には株式発行によって得られた資本金が含まれるため、償却した株式分の金額が自己資本の減少につながる。このように、業績が変わらなくてもROEは向上する。また、借金比率を高めることでROEを高めることもできる。

そのため、過小資本で業績が振るわない会社でもROEが高く出る場合もある。また、新株予約権付社債 (CB) の発行と自社株買いを組み合わせることで、負債を増やし自己資本を減らせばROEは向上する。こうした数字操作によりROEを向上させることもできるので注意が必要だろう。

一方、当期純利益がしっかり伸びており、売上高当期純利益率が高い企業がROEも高いといった特徴もある。日米におけるROEの違いは、実はこの「売上高当期純利益率」に起因している側面が大きい傾向にある。そのため、日本企業においても、売上高当期純利益率が同業他社よりも高いかどうかを見極めることも重要といえる。

結局のところ、業績がしっかり伸びていて、売上高当期純利益率が高く、ROEが高い企業が良い企業と判断することができるのではないだろうか。このように、ROEが高い企業すべてがよいわけではない点には注意して企業を見極めていただきたい。(提供: 大和ネクスト銀行

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