中国,政治犯,汚職,米中関係
(写真=PIXTA)

2016年9月現在、中国の海外逃亡指名手配犯は、70の国と地域に2210人である。そのうち汚職腐敗役人は363人、彼らは79億9400万元を持ち出して逃げている。そのうちのトップ100を「百名紅通人員」としてピックアップ、2015年に公布した。習近平政権は“天網”行動と称して、世界中に網をかけ全員捕えるつもりである。このほどそのうちの1人が帰国した。

百名の国際指名手配犯

100人は顔写真付きで公開されている。リストには身分証ナンバーやパスポートナンバーもある。それぞれ複数所持している者も多く、幹部になれば何でもできることを物語っている。逃亡先は、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど英語圏が多く、人気の留学先と重なる。

その他、香港、シンガポール、韓国もあった。全員役得の多い地方政府や国有企業の幹部である。罪状を見ると、収賄、貪汚(腐敗)職権濫用、違法融資などとなっている。

11月16日には手配中の女が北京首都空港へ帰国、自首した。これで37人を捕まえた。

37番目の女とは

この女・楊秀珠は1946年生まれ。は1995年1月、浙江省温州市副市長。1998年、浙江省建設庁党組成員兼副庁長。2003年、検察が不動産会社を捜査する過程で楊が浮上、彼女は直ちに外国逃亡を画策した。主要親族の海外移民手続きを進め、海外へ賄賂を送金した後、同年4月20日に香港へ出国した。同年6月16日、浙江省人民検察院は汚職犯罪での立件を決定し、13年にわたる追跡が始まる。7月にはインターポールへ通知した。その後シンガポール、フランス、オランダ、イタリアへ。その後2014年5月には米国へ渡る。

包囲網が狭まったのは、やはり習近平政権発足以降、特に2014年の中央反腐敗協調小組の発足による。同年5月中国側は。米側に司法協助請求し、逮捕を目指した。これに対し楊は7月に難民申請を行い対抗する。これには三次の審理があり、往々にして数年を要する。時間稼ぎである。

これに対し、反腐敗小組を筆頭に、外交、司法、反マネーロンダリングなど各部門は一丸となり、楊に対する“高圧体勢”を保持した。同時に楊に対し、抵抗をやめ自首すれば、“適切な法に依る処置”を取ると持ち掛けている。楊は当初「死ぬまで米国を離れない。」としていたが、やがて「帰国も念頭にある。」に変化していく。最終的に自首を決断し、13年に及ぶ国外逃亡生活に終止符を打った。

対米関係は中国のライフライン

2014年12月、中米両国は中米執法合作聯合連絡小組の12次会議上で、楊の案件を最初の合同捜査として確定し、専従班を編成した。この後2年間、中米は、北京、杭州、ワシントン、ニューヨーク等で合同捜査を行った。そして楊の米国における存在空間を徐々に狭めていった。楊の陥落は中米反腐敗合作の重要成果である、と強調している。

米国とうまく協力していることがアピールできたこと、反腐敗闘争の進展、中国にとって2重の意味で喜ばしいニュースであった。逃亡者にとって米国はもはや天国ではない、と知らしめた意味もある。米国との友好関係は、米中で世界を主導している、と国民に示したい現政権にとって、ライフラインとなりつつあるようだ。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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