◉代表的な訴訟案件の概要


◯グリー対DeNA「釣ゲーム」知財高裁判決

グリーがDeNAを相手取り、DeNAが運営する携帯電話向けゲーム「釣りゲータウン2」は、グリーが運営する「釣り★スタ」を真似たものであり、著作権侵害にあたるとして訴えた裁判です。2012年8月8日、知的財産高等裁判所での二審判決では、グリー側が敗れる形となりました。グリーは上告し決着は最高裁に持ち越されています。

グリーは「釣りゲータウン2」の、ゲーム中で魚を釣り上げる際の画面や操作手順が、「釣り★スタ」のそれと類似しており、先にサービスを開始している「釣り★スタ」のこれらの画面や操作手順が、著作権法による保護の対象となる「表現上の創作性」にあたるとして訴えました。

それに対して、知的財産高等裁判所の判決では、グリーが主張する画面や操作性は一般的なものであり、保護の対象には当たらないとしています。
元々ゲーム業界は、お互いのアイディアや表現を取り入れ合って発展してきた歴史があります。そのため、ゲームの中の操作性や工夫を、どの程度まで著作権の対象とするのかの判定が難しく、最高裁での動向が注目を集めています。

なおソーシャルゲームについては以下の記事でも触れていますので、ご参照ください。
お勧め雑誌記事紹介〜週刊ダイヤモンド【富裕層の金と知恵】2/2〜

◯Apple対SAMSUNGのスマートフォン特許訴訟

スマートフォンの特許に関して、米国Appleと韓国SAMSUNG電子が世界中で展開している特許訴訟。非常に注目を集めている案件のため、ご存じの方も多いですね。
躍進するスマートフォン市場の覇権を巡り争う2社は、日本や米国だけの訴訟ではなく、世界10カ国で50件以上の訴訟合戦を繰り広げています。

そして主戦場の米国においては既に決着がつき、Appleの完全勝利に終わりました。今回の裁判は、デザインや操作性など、現在のスマートフォンのスタイルそのもの特許権について争われていたため、Appleが一定の特許権を持つという今回の判決は、画期的だといわれています。
米国訴訟の判断を受け、デザインやUIなど「スマートフォンとは」の根幹に迫る特許について、他の国でもどのような判断が下されるのかが、今後のスマートフォン・ベンダーにとって大きな影響を与えるかもしれません。

なお日本でも2012年8月31日、東京地裁での判決が出ており、結果はAppleの訴えを棄却するものでした。
しかし今回の東京地裁で結果が出たのは、メディア端末とスマートフォン間の「同期」に関連した特許のみです。米国で提訴の対象となった、デザインやUI、操作性などに関する特許では、いくつかの審理が東京地裁でもまだ継続して行われているため、今後の行方に注目が集まっています。

◯【番外編】ピンク・レディーのパブリシティー権をめぐる最高裁判決

ピンク・レディーの未唯mieさんと増田恵子さんが、週刊誌に写真を無断掲載され、パブリシティー権を侵害されたとして、発行元に損害賠償を求めた裁判です。

今回の裁判では、パブリシティー権の取り扱いが、主な争点となりました。
パブリシティー権とは、著名人が「自分の氏名や肖像から生じる経済的利益を独占できる権利」のことです。この権利は法律には明記されておらず、権利の具体的な中身や、保護の範囲をめぐる最高裁の判断が注目されていました。
今回の最高裁判決では、パブリシティー権の中身に対して「肖像などは商品の販売を促進する顧客吸引力を有する場合があり、これを排他的に利用する権利」と初判断を下しています。

そしてその上で

(1)ブロマイド写真など肖像自体を鑑賞の対象として使用する場合
(2)キャラクター商品のように、商品の差別化を図る目的で使用する場合
(3)商品などの広告として使用する場合

この3つのときに、パブリシティー権が侵害されると判示しました。

そのため、今回のケースでは「(ピンク・レディーの写真は)ダイエット記事に関する記事の内容を補足する目的で使われたもので、顧客吸引力の利用を目的するものではない」と述べ、ピンク・レディー側の上告を棄却、敗訴が確定しました。
今後のパブリシティー権の取り扱いに関しては、今回の判例が基本となりそうです。

以上、2012年の企業間紛争案件のなかで、特に専門家の弁護士の方が注目した案件のあらましをお伝えしました。
起業を目指す上で、一番大切なことは顧客への価値創造であり、その為のマーケティングやサービス(製品)開発などになります。しかし、契約や出資などの企業法務の分野で対応を誤れば、企業の存亡に関わります。

常にアンテナは高く持ち、万全の備えをしたいものですね。

BY TOMB