一言に「相続財産」といっても、その中身はさまざまです。現金や預貯金のほか、家や土地などの不動産も財産に入ります。また、美術品や骨とう品などもあります。
現金や預貯金であれば価値はそのものなので、相続分与の考え方は簡単です。しかし、「評価」が必要な不動産や物品の相続分与は難しくなります。そんななかでも、どのようにすればいいのか戸惑ってしまうのが、株式ではないでしょうか。
評価の基準は「持ち主が死亡した日の時価」
上場企業の株式の場合は、預貯金の相続と基本的な考え方は似ています。
まずは相続する株式の取引口座を持っている証券会社に、持ち主が死去したことの連絡をします。すると、証券会社からは所有している株式の一覧と、相続手続きの依頼書が送られてきます。あとは必要な書類を揃え、名義変更の手続きを取ることになります。なお、相続される株式はいったん、相続人全員の共有財産として保留されます(準共有財産)。その後、遺産分割協議を経て決められた相続人それぞれに引き継がれるのです。このとき、相続人が証券の口座を持っていない場合には、基本的には新たに口座を開設する必要があります。
なお、上場株式の場合、気になる相続税の算出のもととなる評価額は、持ち主である被相続人が死亡した日の最終価格が基本となります。ただし、株式は価格の上下が激しいので、「課税時期(死亡時)の月の毎日の最終価格の平均額」「課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額」「課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額」のいずれかが、死亡した日の最終価格よりも低ければ、その最も低い価格を基準とします。
非上場企業の場合は会社規模により評価方法が別
非上場企業の場合は証券会社などを通していませんから、株式を発行している会社に直接連絡を取り、会社が保有している株主名簿の書き換えを依頼します。
非上場企業の株式は、企業の規模(総資産価額、従業員数、取引金額)によって評価の基準が違います。大会社の場合は原則として、類似業種の株価をもとに、1株当たりの「配当金額」、「利益金額」、「純資産価額(簿価)」の3つで比準して評価します(類似業種比準方式)。
小会社の場合は原則として、純資産価額方式によって評価します。これは会社の総資産や負債をもとに算定する方法です。中会社の場合は大会社と小会社の評価方法を併用します。
もっとも、非上場企業の株式は、基本的に資産や金融商品として持っていることが多い上場企業の株式とは違います。非上場企業の場合は、株式本来の役割である、その会社に対する権利として持っていたり、知人や友人が会社を設立した際に頼まれて持っていたりするなどのケースもあるかもしれません。資産としての価値が低い株式の場合は、単純に株主名簿の書き換えで済みますが、それなりに価値があり、相続税が発生するほどの規模の場合には、税務署による確認も入ります。
株式に対する相続税優遇措置の要望も
なお、日本証券業協会は2016年9月、翌年度の税制改正に関する要望をまとめ発表しています。そのなかで求められていることの1つが、上場株式についても土地等と同様の相続税優遇措置を受けられるようにすることです。
株式の相続税は上記のように、持ち主が死亡した日の時価をもとに算出されます。ところが、納税日までに株価が大幅に下落してしまい、納税のために株式の売却を迫られるケースがあるなどのリスクも抱えています。これが株離れの一因にもなっているというのが、要望の背景です。これが今後の税制改正に反映されるかどうかはわかりませんが、こうした動きがあることは知っておいた方がよいでしょう。(提供: IFAオンライン )
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