中国,留学生,殺人事件
(写真=PIXTA)

警視庁は11月25日、東京都中野区在住の中国人女子留学生殺害事件(11月3日)の容疑者・陳世峰を逮捕した。被害者、容疑者とも中国人留学生であった。11月末、被害者の地元・山東省の新聞はあらためて特集を組んだ。母親の悲痛を伝えるとともに、留学と留学生、どちらが問題の源なのかなどと詳細な考察を加えている。

母娘で日本留学の夢を実現

山東省・即墨市出身の江歌さん(24)は、1歳半のとき父母が離婚、母親の手1つで育てられた。即墨市は東レ、テーブルマークなど日系企業の多いところである。中学高校時代の成績は、最初こそ平凡だったがのちに伸び、地元では秀才の1人に数えられるようになる。母は貧しいながら村の区画整理に伴い、2つの家を持っていた。娘の日本留学の夢を叶えるため、そのうちの1つを売却し、保証金には十分過ぎる20万元(約320万円)を用意した。

彼女は来日すると1年コースの日本語学校を半年で修了、すぐに成蹊大学の入学資格を得る。さらに今年の1月にはもう1つ法政大学管理学研究生の入学資格も得た。留学生活は順調なスタートを切り、人生はまさにこれからだった。

母は娘に常々言い聞かせていた。大願成就や優秀であることが大切なのではない。優先すべきは、第一に「安全」第二に「健康」第三に「生活を楽しむこと」第四に「学習」である。

事件の概要

母と娘は毎日のように連絡を取り合っていたが、最期になったのは11月3日夜中の0時8分であった。バス停付近から自宅へ帰る途中だった。その直前の11月2日午後、友人の女性は、彼女が男友達の陳世峰と口論しているのを見た。陳は「なぜ俺にもたれかかるんだ。」、江さんは「人の家に潜り込んでいるあんたの言うことじゃない」と言い返す激しいものだった。江さんは友人女性に警察に連絡しようと提案したが友人はそれを押さえた。友人はのちにそのことを非難されることになる。

11月3日午後5時、母は東京の中国大使館から信じがたい電話を受けた。「娘さんが亡くなった。あなたは今どこにいますか?」いたずらかとも思い、やはり留学生の娘を持つ知人に相談したが、真偽ははっきりわからない。11月4日午前3時42分以降、日本にいる娘の友人たちから次々と事件の概要を伝えるメールが入り始める。現実を受け入れるしかなくなった。

11月4日午前、山東省・青島市の日本総領事館は、母親のビザを即時発給した。中国の外事機関もすべてが一致協力し、彼女は同日午後1時40分には東京行き飛行機の乗客となっていた。

母は自分が説得すれば、娘はいつでも帰国する、と自信を持っていたという。本当に可能だったのか、今となってはもうわからない。

留学が問題か、留学生が問題なのか

中国人留学生は増加した。安全事故もそれにつれて増加している。発展を続ける中国は、世界最大の留学生の送り手である。そして中国人留学生は当該地で一つの特殊グループを形成する、と多方面から批判されている。ドイツ・ベルリン大学の学生センターでは、他国の留学生は何かにつけよく相談に訪れる。

しかし人数の多い中国人留学生は滅多に来ない。面子を大事にしているうちに、問題が累積しているのではないか、と指摘している。この点こそ頻発する“事件”の背後にある根本原因と見られ、ただ安全意識の欠如、と簡単に片付けるわけにはいかない。

亜州通信社の徐静波社長は、日本で24年に及ぶ学習研究生活を送った。滞日期間中には、多くの中国人留学生の面倒を見てきた。その彼は、留学生は、独立生活能力を備えていると同時に、周囲の居住環境に深入りし、中国との文化差異を理解することが大切と言う。さらにその国の法律法規もよく学び守る必要がある。

重要なことは留学生の主力である高校、専門学校、大学生に当たる年齢層に対する、安全知識教育が抜け落ちていることだ、と指摘する。

安全に関しては両親も危機意識を持って、教え諭すとともに、関連機関による系統だった教育も不可欠である。留学関連機関は専門安全訓練コースを設け、国外文化差異、風俗習慣、法律法規を学べる、としている。しかし一方でこれら機関の担当者たちは、安全は基本的に問題ないと称し、簡単な説明会だけで送り出している。留学機関と両親、いずれの思考にも修正を加えねばならない。

近年になってとくに高校段階での留学が急増している。徐社長によれば、90后、00后の若い世代になると、異国文化への感受性を欠き、増長の傾向すら見られる。そのわりに生活自立でも、心理面でも以前の年代より脆弱である。成績は並み以下のまま海外留学した金持ちの子女では、その上に強い盲目性や虚栄心まで加わる。海外留学にそぐわない連中がますます増えている。問題点は数限りない。

徐社長は11月28日午後、ネットで募った3万4800元の義援金を携えて母親を弔問した。江歌さんの死はさまざまな留学の問題を改めてあぶりだす契機となった。あぶりだしただけで終わらせないようにすることこそ、日本好きだった彼女へのはなむけとなるのだろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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