離婚が他人事で済まない時代になりつつある。厚生労働省が発表した「離婚の年次推移」によると、1970年まで年間10万組を超えなかった婚姻関係の解消が、2008年には約25万組へ増加傾向にあることが分かる。

離婚には様々な手続きが必要になるが、老後の「年金」に焦点を当てると、片方が専業主婦(夫)であった場合、今まで年金に関する手続きを行ったことがない方も少なくないため、見落としてしまうこともある。ここでは、離婚時の年金手続きの種類と流れを紹介していこう。

離婚 年金,年金 分割 (写真=PIXTA)

年金分割における2つの制度

年金分割には、「合意分割」と「3号分割」の2つの制度がある。2つの制度は併用ができ、「合意分割」、「3号分割」「合意分割+3号分割」の3パターンの利用が想定される。

合意分割の請求が行われると、婚姻期間中に3号分割の対象となる期間が含まれる場合には、合意分割と同時に3号分割の請求があったとみなされるため3号分割の手続きをする必要はない。

合意分割

合意分割とは、婚姻期間中の厚生年金記録がある場合、夫婦間あるいは裁判手続きにより分割割合を決めることができる制度。

3号分割

3合分割とは、2008年4月1日以後の国民年金の第3号被保険者期間中の厚生年金記録があり、(1) 離婚をしたとき、(2)婚姻の取り消しをしたとき、(3)事実婚関係にある人が国民年金第3号被保険者資格を喪失し、事実婚関係が解消したと認められるときから起算して2年以内に、夫婦間の合意を必要とせずに2分の1ずつ分割することができる制度だ。なお、離婚後、元配偶者が死亡してしまった場合には、死亡から1ヶ月以内に短縮されるため注意が必要だ。

国民年金の第3号被保険者であった方からの請求で行うことができる。3号被保険者とは厚生年金加入者に扶養されている配偶者(年収130万円未満)のこと。

3号被保険者として配偶者に扶養されていたとしても、2008年3月31日以前の分は3号分割できず、合意分割の対象となる。また、合意分割の手続きをすると3号分割の手続きも実施されたとみなされるため、どちらの制度も利用する場合は、合意分割の手続きだけを行えば良い。

年金自体を分割できるわけではない

年金分割とは年金記録を分割する制度であり、年金自体を分割するわけではない。また、厚生年金(旧共済年金)の記録だけに適用されるため、配偶者が自営業で国民年金だけに入っていた場合には年金分割をすることはできない。

年金記録の分割により、婚姻期間中に収めた厚生年金記録を分け合い、その記録に応じて(婚姻期間外に厚生年金を納めている場合はその分も合算して)年金額が決定される。一般的に、給料が低い方にとっては将来もらえる年金額が増え、給料が高い方にとっては将来もらえる年金額が下がるの。

加えて、記録を分け合うのであり、年金をおさめた期間が加算されるわけではない。国民年金は、加入期間が保険料免除の期間も含めて25年(2017年8月から10年へ変更される)を満たさない場合には受給資格がないため、年金分割を実施したとしても加入期間を満たして居ない場合、年金をもらうことはできない。

年金分割手続きの手順、流れ

3号分割だけの手続きをすれば良い場合は、離婚後2年以内(配偶者が死亡した場合は1か月以内)に、年金分割をしてもらいたい側が年金事務所等の厚生年金の手続きを実施できる機関に行き、「離婚時の年金分割の標請求書(標準報酬改定請求書)」を提出する。その他、請求者の「国民年金手帳、年金手帳、又は基礎年金番号通知」、「戸籍謄本、戸籍抄本等の婚姻期間等を明らかにできる書類」が必要となる。

合意分割の手続きは、離婚後2年以内(配偶者が死亡した場合は1か月以内)に年金事務所へ行き、必要書類に記入して請求者の年金手帳または基礎年金番号通知書と婚姻期間が明らかにできる戸籍謄本を提出し、「年金分割のための情報通知書」を入手することから始まる。

年金分割のための情報通知書に記された按分割合の範囲内で年金記録をどのように分割するかを話し合い、次のいずれかの方法で夫婦の合意を得る。

・裁判所の調停・審判
・公証人役場で公正証書作成
・公証人役場で私署証書認証
・合意書を夫婦2人(もしくは代理人)が年金事務所に直接持参する
・年金分割の準備をいつ始めるかが大切

3号分割だけの場合は夫婦の合意は不要のため、離婚後、どちらかが申請すれば問題なく年金分割が完了するが、合意分割の場合は夫婦の合意が必要である。あまりにも早く準備を始めると離婚自体の同意を得にくくなる可能性があるが、離婚後2年以内に手続きを行わないといけない。期限内に済ませることができるよう、タイミングを見計らって準備するようにしたい。(ZUU online 編集部)