親の相続,相続税,エンディングノート
(写真=PIXTA)

FP(ファイナンシャルプランナー)を本業とする筆者には身内からの相談も多い。自身の実務知識で両親や兄弟姉妹にアドバイスをする際は、この仕事に誇りを持つ瞬間だ。ところが、年末年始に実家に帰ると、知識があるがゆえに勇み足をしてしまうことが多いと、FPのあいだで忘年会をすると話題になる。それが、「親がいくらぐらい財産を持っているのか」と、正攻法で聞いてしまうことだ。そして、炬燵(こたつ)を囲んでいた一家の雰囲気が悪くなってしまうという結末になる。

親は「財産いくらぐらいあるのか」と聞かれたくないもの

FPや税理士や財産の総額を聞くと、概ねどれくらいの資産に相続税がかかるのか。いわゆる「生前贈与が必要なのか」を算出することができる。実家の相続は当然自分自身も該当者(多くの場合は法定相続人)のため、それこそ他人ごとではない。

一方で親にとって、相続は「自分が亡くなった時のための対策」だ。歴代相続で引き継いできた土地や家屋といった資産ならともかく、自分の努力で構築した財産を「亡くなったらどうするのか」とは、なかなか聞かれたくはない。相続人がFPなど専門家に限らず、盆や正月に家族親族が集まった場で、相続の話が出るととたんに雰囲気が変わる家庭も少なくないようだ。

その一方で、生前に相続をめぐる意思を共有し、対策を整えなかったばかりに親が亡くなったあと、時間的制限のある相続問題で家族同士で言い争いがおこり、まさに相続が「争族」になったというケースも多い。この対策としては、遺言を書いて貰う、エンディングノートを書いて貰うなどのいくつかの方法があるが、最も的確な方法は、「親が財産をいくら持っているのか子どもが知っておく」ということだ。

例年贈与や相続時非課税制度といった生前贈与対策も、決して行き当たりばったりではなく、長期的な効果を見て取り掛かることが望まれる。兄弟など相続人が複数いる場合は、より注意が必要だ。

まずは、税理士やFPを活用する

財産を承継する子どもたちに直接、資産額を伝えるのは気が引ける。ならば、コンサルタント役の第三者を入れ、相続に備えるという方法が有効だ。その第三者は、相続や贈与に対してアドバイスをする可能性も高いため、関連知識を有している方が望ましい。そして、それを客観的に証明する資格や経験を有していることが効果的のため、税理士やFPの有資格者が適任だろう。また、資格を有していなくても、IFA(独立系フィナンシャルアドバイザー)やPB(プライベートバンカー)としての実務経験が豊富な専門家も望ましい。

では、肝心の「親が財産をいくら持っているか」を知るにはどのような方法があるのだろうか。

本人に内緒で可能な部分を把握する方法

実は、固定資産は、行政機関で家族が閲覧することができる。銀行通帳などの預貯金も目を盗んで覗くことができる。ただ、この方法はあまりお勧めできない。なぜならば、万が一見つかったときに「自分に隠れて死んだときの準備をしていた」と、このうえない不快感を招くことだろう。それまで了承していた相続の準備が頓挫する可能性も否定できない。

エンディングノートを「一緒に作成する」

親の所有財産を知るために最も勧める方法、それは親に正攻法で財産額を尋ねることだ。ただ、それでは親の不快感を招くうえ、目的を達することのできない恐れがある。そこで活用したいのが、エンディングノートの活用だ。

相続は親子間の事業承継にとって必要なもの。相続対策をおろそかにすると様々なデメリットがあり、延滞税などで必要以上の税金を納めなければいけない事態もあり得る。亡くなってから始めるには手続きの時間を短くし、そのためには現状の資産を知って「出来る限りのこと」をしておくことが大切だ。

書面に書き残す動きも、以前は遺言のみだったため敷居の高いイメージが強かったが、最近はエンディングノートがある。エンディングノートには法的拘束力がないため、医療や介護、財産に関する情報は遺言を作成し(情報を共有するためには公正証書遺言が望ましい)、親の想いはエンディングノートに、「一緒に作成する」という気持ちがあるとなおいいだろう。

制度面に不安があれば、前述した税理士やFPに同席してもらうのも賢い方法だ。いずれにいても一つ屋根の下で生活し、血の繋がった家族という関係。家族親族一丸となって、相続という「最期のイベント」の準備を進めるようにしたいものだ。

工藤 崇(くどう たかし)
FP-MYS代表取締役社長兼CEO。ファイナンシャルプランニング(FP)を通じ、Fintech領域のリテラシーを向上させたい個人や、FP領域を活用してFintechビジネスを検討する法人のアドバイザーやプロダクト支援に携わる。Fintechベンチャー集積拠点Finolab(フィノラボ)入居。執筆実績多数。

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