中国,2016年,十大ニュース
(写真=PIXTA)

2016年は前年のように、株式市場の大暴落や天津大爆発事故など世界中の耳目を集めた派手な事件はなく、見た目は平穏だったといえるかもしれない。日中関係もしかりである。しかしこういうときにこそ、水面下の変化は早い。生活者視点を押さえつつ、今年の中国10大経済ニュースをピックアップしてみた。

第10位 AIIB発足と人民元特別引き出し権(SDR)構成通貨入り

10月1日、無事にSDR通貨入りを果たしたニュースは、新聞の2面中段当たりの扱いだった。AIIBはもうほとんどニュースには登場しない。最近のニュースはフィリピン上院が批准を終え、正式にAIIBメンバーとなった、というものだった。昨年の熱気は一体どこへいってしまったのだろう。

第9位 外貨準備高減少、人民元安も続く

11月の外貨準備高は、691億米ドル減少、3兆ドルとなり2011年以来の最低水準に下がった。米ワシントンポスト紙によると、中国の外貨準備の構成は、米ドル60%他はユーロ、日本円など他の主要通貨と見られている。しかし11月に米ドルは大きく上昇したため、実際の外貨減少は500億ドル程度、と伝えている。

また11月の人民元対ドルレートは1.69%下落した。1ドル=7人民元を目前に、下落基調の中、束の間の安定を保持している。

第8位 六中全会で習近平主席「核心」に位置付け

中央宣伝部によると、習近平同志は核心的党中央となり、初心を忘れず、継続前進、党と国家の発達を保証、安定した統治を目指すのだそうだ。前政権までとは形は異なるものの、来年の第19回党大会まではそれなりの政治的安定を得た。G20合意にも指導力を発揮できるだろう。

第7位 不動産バブル、大都市中心に再来

10月の国慶節前後、深セン、北京など価格上昇の激しい地方政府は、相次いで不動産購入制限政策を発動した。これは即効性を発揮し、10月以降少し落ち着いた。全国最高額は深センで、その住宅価格は平均年収の37倍という。上海、三亜、北京、厦門、福州の5都市は14倍だ。一般に発達した国家では6倍を超えるとバブルとみなされる。全国平均の値は今年の第三四半期で7.6倍である。一般論から言えば、部分的なバブル破裂、調整は避けられない。

第6位 個人消費堅調、独身の日セール144%

11月11日の“双11”独身の日セールは、1日の売上1770億4000万元(2兆9000億円)を記録、これは前年の144%に当たる。国家統計局発表の1月~10月までの社会消費品小売総額は▲10.3%伸びた。しかし発表は毎月▲10.0%~10.7%までの狭い範囲に収まっていて、あてにならない。小売の現場では完全なオーバーストアとなった実店舗の淘汰や、ネット通販の決済を含めた技術革新がドラスティックに進んでいる。

第5位 ネット金融と決済、急速に進行

ネット金融、第三支付平台(現金でも信用カードでもないネット決済)は急拡大を続けている。最大手の“支付宝”(アリペイ)を始め、新規参入も増加し続けている。SNSを利用した“微信支付”は別カテゴリーだが、小さな売買には大変便利でこちらも増加中である。やはり中国人は商人というしかない。この部門における商品開発能力や、使い勝手の良さには目をみはるものがある。

第4位 GDP成長率、第1四半期~第3四半期6.7%とまったく同じ

国家統計局は、第一~第三四半期のGDP成長率をそれぞれ▲6.7%と、全く同じ数字を発表した。これを信じろと言う方が難しい。ただ中国経済停滞の証明としての意味はある。国家統計局前局長は1年持たず今年2月解任されている。正しい数字を出すにしても順を踏む必要がある。片や中央の思惑もあり全く身動きがとれない。その結果、同じ数字を出し続けたのだろう。

第3位 農村戸籍、都市戸籍の二重戸籍解消、地方政府の財政負担大きく

9月19日、中央政府は、58年にも及んだ都市と農村の二重戸籍を解消する、と発表した。現在は31省・特別市が具体案の作成を行っている。しかし均等化コストは1人当たり13万元と見られ、全体ではこの9億倍である。ただでさえ財政規律を欠く、地方政府には大きな負担となる。

第2位 地方政府の負債16兆元(250兆円)不良債務の分類管理導入へ

これは中国最大の問題である。地位は利用するのも、とする風土は中国文明勃興以来の伝統である。それに現代社会主義官僚体制の成績考課、使ったもの勝ちの出世競争が加わり、財政規律はほとんどズタズタだ。こうして累積した地方政府の債務を、4段階に分類して管理することになった。銀行の不良債権管理と全く同じである。

第1位 G20杭州サミット、中国の過剰生産が世界的大問題に

7月27日、オランダ・ハーグの国際司法裁判所の南シナ海裁定で、中国は一敗地にまみれた。そこから国内世論を取り繕い、G20の議題となることを必死で抑え、何とかG20を成功裡に導いた。その代償として、「中国の産業における過剰生産能力を含む構造問題が、世界経済の弱い回復と市場需要の落込みによって悪化し、貿易と労働者に負の影響を与えている。」ことを認めさせられた。「政府機関による支援措置が市場のゆがみを引き起こし、世界的な過剰生産能力に寄与しうる。」ということもである。ただし首脳宣言での名指しだけは避けられた。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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