年金,将来不安,再雇用,定年延長
(写真=Creativa Images/Shutterstock.com)

目次

  1. はじめに
  2. 近づく「70歳定年」時代
  3. 「再雇用」が意味するところとは
  4. 「安心した老後」を迎えるために

はじめに

2018年9月に自民党総裁3選を果たした安倍晋三首相は、総裁選挙の中で「人生100年時代にしっかりと備えて、社会保障制度の改革を行う」と述べ、年金制度について「生涯現役であれば、70歳を超えても受給開始年齢を選択可能にしていく。そういう仕組みづくりを3年で断行したい」との考えを示した。

これには、「高齢者をいつまで働かせるつもりなのか」「年金制度の破綻を認めたようなもの」といった批判もあったが、超高齢社会の到来を考えれば、労働力を確保し、年金制度の維持をするための当然の策といえるだろう。

ただ、国が制度を変えたからといって、すぐに社会が変わるわけではない。当然、国民も変化への対応が求められ、そこには時として痛みもともなう。

人生100年という超高齢社会の到来を前に、定年後の生き方について考えたい。

近づく「70歳定年」時代

すでに国は年金の支給開始年齢を67歳に引き上げる案の検討を行っているが、今回の安倍首相の発言が、検討にどう反映されるのかは、まだ明らかではない。しかし、「元気で働けるのならば、支給開始は70歳から」という流れになっていくのは間違いないだろう。そうなった場合、社会はどのように変わるのだろうか。

仮に「年金支給開始は原則70歳から」となれば、当然、それに合わせて、70歳まで働くのが当たり前の世の中になるだろう。そうしなければ、年金が開始されるまでの間、収入を得られなくなる人が続出し、社会保障費も膨らむ。国は是が非でも企業に協力を求めるだろう。

現在の法律では、企業は「定年の引き上げ」か「継続雇用制度の導入」「定年の廃止」の中のどれか1つを選んで実施するよう義務付けられている。

厚生労働省が2017年10月に公表した「平成29年高年齢者の雇用状況」によると、調査対象となった全国の「常時雇用労働者が31人以上」いる企業15万6113 社のうち、「希望者全員が65歳以上まで働ける」企業は11万8081 社(75.6%)で、前年に比べ4647社、1.5ポイントの増加となった。既に、希望すれば65歳まで働ける社会は実現しており、さらに年齢が伸びていくのは間違いない。 だった。対象企業の中で占める割合は74.1%となり、対前年比1.6ポイントの増加となっている。

「再雇用」が意味するところとは

高齢の労働者にとって、「希望者全員が働ける会社が7割を超えている」というのはありがたい話だが、実は「働く環境」には多くの課題がある。

「65歳以上まで働ける」といっても、正社員として働き続けることができるわけではない。先の調査結果を見ても、定年年齢を延長したり定年制を廃止したりした企業は全体の2割程度にしか過ぎない。大半の企業が採用しているのは「定年後の継続雇用」、いわゆる「再雇用」である。

再雇用とは定年年齢はそのままにしておき、定年後は雇用契約を結び直して改めて雇用する制度ことだ。多くの場合、給与が大きく減額され、役職も与えられない。 再雇用となり、「それまでの部下が上司になり、現場の第一線で働かなくてはならなくなった」というのは、まだ恵まれた方で、「子会社でアルバイトと同じ仕事をするようになった」「これまでの経験やスキルが全く役に立たない単純労働を与えられた」という話もよく聞く。

ただ、これも再雇用された側の受け止め方しだいの部分もあり、こうした扱いに「プライドが許さない」と怒る人がいる一方で、「定年後は責任の重い仕事ではなく、軽い作業をやらせてもらえればいい」と考える人もいるので、会社も対応が難しい。現在は、制度がまだ成熟していないともいえ、今後、働く高齢者が増えていく中で、働く環境や条件、会社のマネジメントも整っていくだろう。

「安心した老後」を迎えるために