目次

  1. 老後破産への不安を解消するために
  2. 少子高齢化で浮かび上がる「長生きリスク」
  3. 90歳まで生きる前提で「お金の計画」を立てる
  4. 何よりも大切なのは、1人で悩まないこと

老後破産への不安を解消するために

最近、「老後破産」という言葉をメディアなどで見かけるようになった。老後の生活を年金で賄おうと思っていたものの、収入が足りなく、生活が破綻する高齢者が増えているという。年金受給開始年齢も引き上げられ、老後の不安は、定年を過ぎた高齢者だけでなく、定年を前にした現役世代にも広がっている。

内閣府が発行している「高齢社会白書」によると、「経済的な暮らし向きに不安はない」と答えた60歳以上の男女は、全体の64.6%を占めたものの、「多少心配」「非常に心配」と答えた男女も34.8%と、およそ3割を占めた。特に年齢が若いほど、心配している割合は増え、80歳以上の人では「心配」の割合が28.3%だったのに対し、60~64歳では「心配」と答えた人が37.8%と4割近くにのぼった。

男女ともに平均寿命が80歳を超える一方で、老後の生活を年金収入だけに頼るわけにいかなくなった今、定年退職後に備えた「お金の計画」は不可欠だ。老後破産とならないための経済的な準備や心構えについて考えてみよう。

少子高齢化で浮かび上がる「長生きリスク」

定年退職後のマネープランを考えるうえで忘れてならないのが、「長生きリスク」である。もちろん、健康で長生きすることは幸せなことだが、本当に幸せな生活を送るためには「長生き」を前提とした「お金の計画(マネープラン)」を立てることが大切だ。しっかりと生活資金を用意しておかなければ、長生きであることがそのままリスクとなってしまう

厚生労働省が発表した平成29年における男性の平均寿命は81.09歳、女性は87.26歳となった。平均寿命とは、0歳児が平均して何歳まで生きるかを示した数値であるが、老後の備えの準備を考える際には「平均余命」について考えることが重要である。

「平均余命」とはある年齢の人が平均してその後何年生きられるのかを示した数値である。平均余命がわかる簡易生命表で確認すると、50歳男性の平均余命は、32.61年であり、平均的な人で83歳まで長生きすることになる。。平均余命は年々伸びており、今後も伸びていくことが予想される。 つまり、50歳の男性が定年退職後のお金の計画を立てる際には、90歳くらいまでは長生きすると考えた方がよい。

では、90歳まで生きるとして、いくらくらいの資金を用意しておけばいいのだろうか。

総務省の家計調査(29年)http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/nen/pdf/gy02.pdf によると、2人以上の高齢無職世帯の平均的な収入は20万4587円で、年金などの社会保障給付の額は17万5799円。一方の消費支出は23万7682円だった。仮に年金収入だけで生活しようとすれば、月約6万円の赤字となる。さらに、税金や突然の支出などを月5万円と見込むと、毎月11万円の赤字となってしまう。

これを元に65歳から90歳までの赤字総額を想定すると、11万円×12カ月×26年で3432万円となる。これに医療や介護の費用300万円を加えた3732万円が老後のために必要な資金といえるのではないだろうか。

90歳まで生きる前提で「お金の計画」を立てる

それでは、具体的に定年退職後の「お金の計画」をどう立てれば良いのか、具体的にある世帯を想定して考えてみたい。

①夫50歳(サラリーマン/年収650万円/定年退職60歳/退職金1500万円) ②妻50歳(パート月収8万円) ③長男22歳(大学4年生) ④貯蓄1,100万円 ⑤住宅ローン65歳完済予定(60歳時点の住宅ローン残高600万円)

退職金1,500万円と貯蓄1,100万円の合計2,600万円から60歳で住宅ローンを完済すると60歳時点で2,000万円が残る。

つまり、65歳までに3,732万円を蓄えるには、60歳時点で手元に残る2,000万円を差し引いた1,732万円を50歳から65歳までの15年間で準備する必要がある。そのためには「1,732万円÷15年間÷12ヶ月=9万6,222円」で、毎月約9万円を貯蓄すればよい。貯蓄の一部は投資に回すことも考えたい。たとえば毎月3万円を年利3.50%で15年間運用すると運用益は178万9,571円にもなる。

上記の通り、定年退職後の「お金の計画」を考えるにあたってはまず、家計の見直しが必要になる。世帯によって事情は異なるが、基本的には目標の年数までに貯蓄するには毎月の収支でいくら可能なのか、家計をどう見直せば可能になるのかを考えることが大切だろう。

何よりも大切なのは、1人で悩まないこと