家庭の経済状況などを理由に、奨学金制度を利用する人が増えてきている。
その中でも多くの人が使うのが貸与型のものだ。このタイプのものはお金を借りて使うものであるので、当然返済が必要となる。
学校卒業をすると実際に返済が始まるが、気になるのはそれを一括返済(繰り上げ返済)した方がいいのかどうか、ということ。
仕事や自分の経済状況にもよるが、金銭的余裕があるなら早く返還を終わらせたい...という人も多いのではないか。
そこで今回は、奨学金のシステムを見ることから始め、繰り上げ返済の是非についてもチェックしていこう。
奨学金のシステムをおさらい
まず奨学金の制度は、大きく2つに分けられると言ってよいだろう。
返済の必要がない「給付型」のものと、返済の必要がある「貸与型」のものだ。
前者の場合、多くの大学・専門学校でその制度が導入されてはいるものの、やや受給の条件が厳しいものが多く、そのため希望をしても認定を貰えないということも考えられる。
それに対して貸与型の場合はより多くの人が利用出来るが、将来的に返済を行わなければならず、その中には利息があるものも存在する、という違いがある。
JASSO(独立行政法人 日本学生支援機構)の場合、貸与型奨学金の返済は、借入れが終わった半年後から開始される。
毎月定額返還、もしくは毎月に半額の返還を行いつつ、半年ごとにもう半分の返還をまとめて行うという支払いの方法がある。
どちらの方法も基本的に口座からの自動引き落としとなるが、支払いを延納してしまうと延滞金・督促、ブラックリストへの登録などがされてしまう可能性もあるので注意が必要だ。
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奨学金の利息について
ここでは、日本学生支援機構における奨学金の利息について見ていこう。
貸与型の奨学金制度は更に「第一種奨学金」と「第二種奨学金」の2つに分けられる。
第一種は利息が発生しないが、第二種の場合は奨学金の借り入れに金利が発生し、返済の際に利息を考慮した支払いを行っていく必要がある。
第二種奨学金の申し込みの際には「利率固定方式」「利率見直し方式」のいずれかを選択する。
第二種奨学金も住宅ローンなどと同じような性質を持っているため、市場金利などによってその利息が変化する可能性がある。
利率固定方式の場合は奨学金借り入れが終了した時点での利率が返済を終えるまで適用され、利率見直し方式の場合はおよそ5年ごとに利率の見直しが行われるようになっている。
前者のメリットとしては「同じ金額を支払い続ければいい」という点が挙げられるだろう。将来市場金利が上がったとしてもそれに影響を受けない、というのが強みだ。
対して見直し方式の場合のメリットとしては、「将来市場金利が下がった場合に利率が低くなる可能性がある」という点がある。が、市場金利が上がった場合は利率が高くなってしまう、ということがあるのが欠点であると言える。
どちらを選ぶのか、については過去のデータを参考にしてみると良いだろう。
また市場金利の上下については金融政策の動向などを考える必要があるため、そういったことが面倒、という場合は利率固定方式を選ぶ方がいいだろう。
奨学金は一括返済しないほうがいいのか
さて、奨学金返済を行っていくうえで議題に上がってくるのが、「一括返済(繰り上げ返済)を行った方がいいのかどうか」ということだ。
日本学生支援機構における奨学金の場合は、先に書いたように基本的には毎月の定額返還を行っていくこととなるが、途中で一括返済(繰り上げ返済)を行うことも可能となっている。
奨学金をまとめて返済した方がいいか、それとも一定のペースで返済した方がよいか、ということはそれこそ個人によって異なるが、双方の特徴を参考にしてみるとよいかもしれない。
まず、繰り上げ返済の場合の大きなメリットとして、繰り上げを行った期間に対しては利息がかからない、ということが挙げられる。
通常、第二種奨学金の場合は支払いに利息がつくこととなっているので、それがなくなることは金銭的にかなりの利点であると言えるだろう。
ただそれが目的となり無理な支払いを行って、それ以外の出費に対応できなくなる...ということになってしまうと本末転倒だ。
一定返済の場合は、繰り上げ返済をしないことで使わなくなったお金を別のことに使える、というメリットがある。
学校卒業後、結婚、子育てなどライフプランにおいて様々な出費が考えられるため、そういったことに備えてお金を蓄えておく、というのは重要だろう。
総じて、自分の経済バランス等を考えたうえで、無理のない返済を行っていく必要があると言える。
奨学金の繰り上げ返済の是非
先にも書いたように、繰り上げ返済を行うかどうか、ということは人それぞれであると言える。
しかし繰り上げ返済によって利息がつかなくなる、というのは大きなメリットであり、出来る限りそれを活用して支払いを行った方が最終的な総支出も少なくなる。
日本学生支援機構の第二種奨学金における利息はどんなに市場金利が上昇したとしても3%が上限となっているが、それを払わないに越したことはないだろう。
またまとめて支払いをしておくことで、将来延滞が起きる可能性がなくなるということ、気持ち的に楽になること、といった利点も考えられる。
自分の支払いプランを考えたうえで、余裕があるのであれば繰り上げ返済を行っていくと良いかもしれない。
奨学金のシステムを知ったうえで確実な返済を
ここまで見てきたように、多くの人が利用する第二種奨学金の場合は必ず支払いのことを考えなくてはならない。
近年その返済が行えず、奨学金で破産をする、といったような事例も出てきており、返済にあたっては明確なプランを立てておく必要があるだろう。
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